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"すごうで 2024"の活動

2013年から始まったラックの社会貢献事業のひとつであり、ITに関する突出した技術力やアイデアを持つ若者の才能の芽を発掘・支援するITスーパーエンジニア・サポートプログラム「すごうで」。2024年度は阿曽祥大さん(東京都、採択当時高校2年生)と、清水紘輔さん(山形県、採択当時高校3年生)の2名からなるチームを支援しました。

「すごうで」と出会うまで

彼らは、「情報技術を活用して世の中にまだないものを作り、人々の生活をより良くする」という行動理念のもと、心理学的知見を取り入れながら、精神疾患の改善や立体音響の語彙学習への活用方法など、実社会に根ざした課題に取り組んできました。そうした探究の中で、「過去の自分が、今の自分にとって最良のカウンセラーになるのではないか」というアイデアに辿り着き、大規模言語モデル(Large Language Models:LLM)や音声会話システムを活用して、自分自身のデジタルツインによるカウンセリングを通してメンタルヘルスをサポートするという構想にまとめました。その構想を「すごうで 2024」に応募し、支援対象者として採択されました。

目標に向かってエネルギッシュに突き進む

2024年4月から「すごうで 2024」の支援が始まると同時に、彼らは驚異的なスピードで走り始めました。4月後半に開催された、日本最大級のネットカルチャーイベント「ニコニコ超会議2024」への出展の機会を得て、「声のデジタルツインを生成する」という目標を立てました。準備期間が少ない中でも2人は連携しながら開発を進め、映像や音声の中で人物やキャラクターの口の動きと発話が一致するように調整する「リップシンク」や音声合成を用いたプロトタイプを作成し、自分に対するメッセージを生成するという形で来場者にデジタルツインを体験してもらう展示を行いました。

ニコニコ超会議に出展した経験から、リップシンクの効果に着目した彼らが次に取り組んだのは、イギリスで開催された「Human-Agent Interaction(HAI 2024:以下、HAI)」という国際会議へのポスター投稿です。「リップシンクの精度がユーザーエンゲージメントに作用するのか」というテーマを設定し、ラック社員の協力も得ながら、3Dキャラクターの唇の動きの有無によって視聴者の理解度がどう変化するかを実験・分析しました。検証からポスター執筆は8月にかけて行われ、2人のうち1人は受験生、1人は大学生という忙しい立場にもかかわらず、2人は互いの強みを活かし、役割分担をしながら検証から執筆までをやり遂げ、無事にポスターを投稿できました。目標を決めたらエネルギッシュに突き進む彼らの姿に、支援チームは思わず感嘆の声を上げました。

ヒューマンデジタルツインの課題に着目

8月以降は受験勉強に集中するために、研究のスピードをスローダウンした時期となりました。それは同時に、彼らにとって研究の方向性やテーマへの考えを深める時間ともなりました。「過去の自分と対話する究極のカウンセリングの実現」という採択テーマのもと、ニコニコ超会議やHAIポスター投稿と開発を進めていく中で、彼らは大きな問いに直面しました。それは、過去の自分を投影したデジタルツインが今の自分に対して「カウンセリング」を行うという体験が、ヒューマンデジタルツインの技術を用いた一体化につながり、人の考えや思想を根本的、潜在的に変える手法としてどこまで影響を与えるのかということでした。

特に彼らが課題であると感じたのは、デジタル技術が持つ「同期性」による自他の一体化です。現実の空間では1人でいるにも関わらず、VRやSNSを利用している時に「1人なのに"1人じゃない"」と感じたことはないでしょうか。そういった感覚が強まることで、現実では起きていない出来事さえ、あたかも事実のように認知され、思考や感情に影響を及ぼしてしまう可能性があるのではないかと彼らは考えました。そして、「この技術を推し進める前に、その危険性を問う必要がある」との結論に至り、今後の方向性を大きく転換。ヒューマンデジタルツインによって生まれる虚構のリアルが、私たちの認識や記憶、自己像にどう影響を及ぼすのかを問う、問題提起型の展示を行うことを決断しました。

ユニークな体験を提供した成果報告会

方向性が定まり、2025年を迎えると、いよいよ1年間の成果をまとめるフェーズに入りました。4月からの活動で培った開発力や発想力を存分に生かしながら、2人は展示のコンセプト設計とVRシステムの開発を進めていきます。彼らが特に問題であると指摘したデジタル技術の作り出す「虚構性の高い世界」という概念をユーザーに強く認識させるためには、誰もが知っているにも関わらず誰も実際には行ったことがない空間を舞台に設定することが効果的であると考え、彼らが選んだのはなんと「棺桶」でした。

棺桶に入った状態で、自分がいる空間を抜け出して空中から自分を見つめる、幽体離脱のような体験をVRで再現するというゴールを決め、準備を進めていきました。実物の棺桶を使用することは難しいため、代替できるものは何かというところから、空中にいるような浮遊感をどのように再現するか、虚構性の質を高めるにはどうすればよいかなど、沢山のアイデア検証や試行錯誤を繰り返しました。そして、互いの強みを活かし合いながら開発を進め、3月の成果報告会を迎えました。当日は、開発したVRシステムの体験会も無事に実施しました。

成果報告会の様子
成果報告会の様子
成果報告会の様子
成果報告会の様子

おわりに

日々の学業と並行しながら、時に悩みながらも試行錯誤してエネルギッシュに走り抜けた彼らの姿に、メンターを含む支援チーム全員が大いに刺激を受けた1年間でした。すごうで 2024のプロジェクトはこれで一区切りとなりますが、彼らの探求心と可能性に終わりはありません。「すごうで」で得た経験も糧にしながら、まだ誰も足を踏み入れたことのない世界に挑み、成長を続ける姿を楽しみに見守っていきたいと思います。阿曽さん清水さんの活動や、そこから得たことについては、ご本人に寄稿していただいた「"すごうで 2024" レポート」でぜひご覧ください。

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