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【カスタマーストーリー】ブロックチェーンに魅入られたフォアランナー(先駆者)、Opening Lineが見据える改ざんのない世界

「カスタマーストーリー」では、ラックとの関係の深いお客様やパートナーの事業活動を紹介いたします。


暗号資産(仮想通貨)は、インターネット時代の新しい財産とされ、この暗号資産を実現した技術が、「ブロックチェーン」だ。ブロックチェーンの普及初期よりこの技術の可能性に魅入られたOpening Line(オープニングライン)は、ブロックチェーンを活用した未来に何を見ているのか。

ブロックチェーンに着目するOpening Line

ブロックチェーンを活用した暗号資産は、新しい通貨の形態を世に示したことで注目を浴び、膨大な個人投資や送金処理に活用されています。しかし、2014年に発生した仮想通貨取引所に対するサイバー攻撃を発端に、その後も多額の被害が発生しています。それらサイバー攻撃被害を振り返ると、取引所の取引を司るソフトウェアや、ブロックチェーン間で資産交換を行う機能の脆弱性を悪用されました。ブロックチェーンそのものの実装上の問題や、脆弱性が存在するといったことはなく、2008年に発表されたアルゴリズムは引き続きセキュアであると言えます。

ラックはセキュリティ診断などのサービス提供によって、ブロックチェーンの実装をサポートしています。この記事では、Opening Lineとラックの取り組みについて、ご紹介します。

この、ブロックチェーンの実装のユニークさや強固なデータ保護能力に魅了されたのが、Opening Lineです。Opening Lineは、2017年に佐々木亮一氏により設立されました。

佐々木氏は、元々は製造業で製品ライフサイクル管理(PLM:Product Lifecycle Management)を開発するソフトウェアエンジニアでしたが、製品に関する情報管理において過去の情報の蓄積と保護が重要であると考えていた時に、ブロックチェーンの存在を知りました。

代表取締役 佐々木亮一氏
代表取締役
佐々木亮一氏

ブロックチェーンは、従来のコンピュータシステムにみられる集中管理型ではなく、分散型台帳技術(DLT:Distributed Ledger Technology)の形態をとっているのが特徴です。ブロックチェーンに参加しているノード(コンピュータ)に、台帳情報(取引情報)を複製して保存することで、データの信頼性を担保する仕組みです。例えば一つのノードでデータを改変しても、他のノードに保存されたデータと不一致が検出され、改ざんの事実を把握することができます。

佐々木氏は、ブロックチェーンにより情報セキュリティの3要素であるCIA(後述)のうち、特に完全性と可用性が保たれることに着目し、ブロックチェーン技術の製造業への応用に向けてOpening Lineを設立しました。

情報セキュリティのCIA

C:Confidentiality(機密性)
情報へのアクセスをコントロールできること
I:Integrity(完全性)
情報が正確で改ざんされていないこと
A:Availability(可用性)
情報がいつでも利用できること

PPAP廃絶に向けての提案

Opening Lineが現在取り組んでいるのが、いわゆるPPAP問題です。
PPAPとは、保護すべき情報を平文で送信せずに暗号化するための取り組みで、パスワードが付けられた暗号化されたファイルを送り、それとは別のメールでパスワードを送るやり取り(プロトコル)をあらわしたもので、多くの企業がビジネスマナーとして採用したものですが、実効的ではないことからクラウドストレージなどアクセスの認証制御で保護する方式に切り替わりました。

Opening Lineは、情報の共有や保存のためのサービスにブロックチェーン技術を採用した、「Juggle(ジャグル)」を開発し、提供しています。Juggleはクラウドストレージ同様に、情報の保存や共有を提供するサービスです。Juggleではファイルを暗号化して送信してストレージにアップロードし、復号のためのキーは暗号化してブロックチェーンを使って配信されるため、ハッキングのリスクを低減することができます。

Opening LineでJuggleをはじめとする製品開発を進める岡田氏は「データ保護はもちろん、昨今のストレージの大容量化や通信スピードの高速化により、利用の快適性や使いやすさにこだわっています。」と語っています。

ブロックチェーンイノベーション事業部 部長 岡田和也氏
ブロックチェーンイノベーション事業部 部長
岡田和也氏

環境問題と二酸化炭素排出量トレーサビリティに活用

JuggleのようなIT関連製品だけでなく、環境省が推進する「グリーンライフ・ポイント」推進事業にも取り組んでいます。グリーンライフ・ポイントとは、環境にやさしい行動に取り組む消費者と企業に対して、ポイントという形でインセンティブ(報奨)を与えることで、脱炭素型のライフスタイルへの変容を促進させる取り組みです。

食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業 | COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。

この事業に対してOpening Lineは、ブロックチェーンを用いたポイントシステムおよび商品のトレーサビリティを実現するシステムの開発・運用に取り組んでいます。

  • 商店や農家直売所等で、規格外・余剰品等の廃棄リスクのある商品・サービスを購入した際に、ポイントを発行
  • 商店や農家直売所等で、地産商品・サービスの購入した際に、ポイントを発行
  • 商店や農家直売所等で、再生可能エネルギーやゼロカーボン・ドライブ(走行時のCO2排出量がゼロ)を利用し、脱炭素型商品を購入する際に、ポイントを発行

食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業 事業計画~株式会社Opening Line

環境や地域にやさしい行動を奨励することで、よりよい社会を実現する取り組みの背景には、最新の技術が活用されている事例です。

佐々木氏は、グリーンライフ・ポイントの取り組みに向けて、次のように語っています。
「商品のトレーサビリティは、真正性が重要になります。ブロックチェーンが持つデータの耐改ざん性はまさしくうってつけの技術です。社会をよくしてゆく取り組みに、新しい技術が貢献できることは素晴らしい事だと思い取り組んでいます。」

代表取締役 佐々木亮一氏

セキュアな技術でも、実装次第でリスクが顕在化する

このように、活用範囲が拡大するブロックチェーンですが、ビットコインにおける仮想通貨取引所へのサイバー攻撃による被害事例は、今なお散見されます。岡田氏は、ブロックチェーンに関連したサービスのサイバー攻撃報道が、普及に大きなブレーキをかけたことは否めないと語りました。一連の被害はブロックチェーンの実装上の問題ではなく、ユーザーインターフェースや交換処理(ブリッジ)の内在した脆弱性を悪用されたことが問題になっていたようです。

ブロックチェーンイノベーション事業部 部長 岡田和也氏

ブロックチェーンはデータを保護することに最適化されていますが、ノード(コンピュータ)や中間のインターフェース用のサーバーがサイバー攻撃に脆弱であれば、攻撃者の侵入を許すことで、不正な取引であるにもかかわらず正規な取引として成立してしまうのです。
そのためOpening Lineでは、開発したサービスのセキュリティ品質を最優先に検証しています。

セキュリティ品質を検証するために、ラックの提供するセキュリティ診断を採用し、ユーザーが利用するWebサイトの脆弱性を徹底的に調査して提供しています。
岡田氏は「データの保護や完全性を期待して当社のサービスを利用いただいている方に、安心してサービスを活用いただくため省くことはできない検証です。」と語られました。

Opening Lineとブロックチェーンの今後

ガートナー社が、2022年9月に発表した「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル」において、ブロックチェーンは幻滅期後半に位置付けられています。

まさに、Opening Lineの取り組みはこの流れに沿っていて、これからのブロックチェーンのさらなる活用に期待が集まっています。

ガートナー ハイプ・サイクル

ガートナー社ハイプ・サイクルについてはこちらをご覧ください。
「Gartner リサーチ・メソドロジ ハイプ・サイクル」
https://www.gartner.co.jp/ja/research/methodologies/gartner-hype-cycle

さらに詳しく知るにはこちら

ラックが提供するセキュリティ診断

同社の社名であるOpening Lineとは、物語の序章を意味します。まだ市場に受け入れられていない技術に着目し、その技術が広がるストーリーを自ら紡ぎたいというOpening Lineは、ブロックチェーンすばらしさを世の中に問い、改ざんのない世界の実現に取り組むことでしょう。

さらに詳しく知るにはこちら

ラックが提供するセキュリティ診断

Source: Gartner®, ガートナー社プレスリリース, 2022年9月1日
Gartner®、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」を発表
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20220901

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