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メインフレームの構築・運用に従事する技術者の交流会「LAC Mainframe Day 2020」開催レポート

企業の情報システムではクラウドの活用が当たり前になりましたが、金融機関や公共機関などの大きな組織では、今なおメインフレームが利用されています。こうした組織で運用される大規模な基幹業務システムでは、ミッションクリティカルなシステムであるがゆえに安定して稼働し続けるための厳しい要件が求められます。

ラックでは創業以来、金融機関をはじめとしたお客様のメインフレーム環境の構築や運用支援をしてきました。そんな経験を持つ、メインフレームに精通したエンジニアを集めた交流会「LAC Mainframe Day 2020 ~メインフレーム・ワイガヤ会~」を先日開催しました。

盛り上がりを見せた交流会の様子をダイジェストでお届けします。オープンシステムとは一線を画す、メインフレームの魅力と今を多くの方に知っていただけると嬉しいです!

オンラインの社内交流会の様子
社内交流会はオンラインで開催しました

社内メインフレーム技術者のコミュニティ活動報告

メインフレームに従事する技術者の悩みは、必要な知識を得る手段が少ないことです。メインフレームに関する技術は、オープン系の技術と比較すると、インターネットの情報や書籍が圧倒的に少ないのが実情です。また、同じ社内であってもプロジェクトやチームごとにエンジニアが分断してしまうと、ひとりひとりが持つ技術やノウハウが継承されずに埋もれてしまうという問題があります。そこでラックでは、メインフレーム技術者の育成と技術交流を目的とした社内コミュニケーション活動を実施しています。

中でも活動が活発なのは、メインフレーム入門講座と資格試験対策勉強会です。入門講座では、主にメインフレームに興味を持ってもらうことを目的とした講座を実施しています。今年度は「ゼロからはじめるSystem z」、「アーキテクチャーとハードウェア構成」、「z/OS概要」、「z/OSミドルウェア製品」、「DS8000ストレージ製品概要」などの講義や「当社所有のメインフレーム環境を使用したz/Linux操作デモ」などを行いました。受講者アンケートでは、「メインフレームに興味を持った」、「仕事でメインフレームに携わってみたい」と答えた人が7割を超える結果となりました。

また、メインフレームに関する知識を深めるにあたっては、現場でのOJTも方法の一つですが、資格取得を目標として勉強するのも有効です。メインフレーム製品販売に必須となる資格試験の想定問題をもとに勉強会を実施しました。

他にも社内のメインフレーム技術者の交流を目的として、「スキル交流会」を開催しています。スキル交流会では、それぞれが得意とするハードウェアやソフトウェアに関するスキルを発表してもらい、複数拠点のメンバー同士で交流会を行いました。これまで交流のなかったメンバー同士のネットワークが構築でき、情報交換ができるようになりました。現在は、社内のコラボレーション・ツールであるMicrosoft Teamsにメインフレームのチームを作り、QAや事例に基づく助言、裏技投稿等を行い、個々のノウハウを広く共有しています。

LinuxONE 20Years~ベンチマークから見るメインフレーム

企業のIT環境のクラウドシフトが進む中、改めて見直されているメインフレームの特徴と、今でもメインフレームが使われ続けている理由について、ベンチマークを基に議論しました。ベンチマークでは、「IBM LinuxONE」インスタンスと「AWS EC2」インスタンスを用意しました。CPU計算性能をフルで使うようなケースと大量の並列処理を想定したケースの二種類のソースプログラムを準備し、それぞれのインスタンスでコンパイルして実行しました。全く同じソースプログラムによる性能比較結果を考察することにより、何となく分かっていたメインフレームの優位性が疑いようのないベンチマークの数値で明らかになっています。こちらのレポートの詳細をLAC WATCHに掲載しているのでぜひご覧ください。

zTC(IBM z Technical Community)での活動報告

zTCとは、「IBM z Technical Community」の略称です。メインフレーム系エンジニアのスキルアップや若手技術者の育成支援を目的として発足した日本アイ・ビー・エム株式会社主催のコミュニティで、10年以上の歴史があります。「若手会」「女子会」「Bistoro Z」といったユニークな分科会が開催されており、ラックからも複数のエンジニアがコミュニティに参加しています。zTCに参加している社員から分科会の活動報告がありました。

IBMの最新メインフレームz15
IBMの最新メインフレームz15。クラウドと連携したミッション・クリティカルなハイブリッドクラウド環境に最適なメインフレームだ。1日に最大1兆件のWebトランザクションを処理することができる高性能性と耐障害性を誇る。
(出展:IBM - Image Gallery

「Bistoro Z」分科会

まずは、「Bistoro Z」分科会です。こちらの分科会では、「IBM Watson Machine Learning for z/OS」を使った新たなソリューションの可能性を考察しています。ワトソンとは、IBMが開発した質問応答システム・意思決定支援システムです。「IBM Watson Machine Learning for z/OS」を使うことで、ワトソンで培われたAIや機械学習のノウハウをメインフレームでも簡単に利用することができるようになります。

実際にメインフレームではどのような場面でAIを使うことが検討されているのでしょうか。メインフレームは金融機関や官公庁の基幹業務システムを支えており、給与振込や銀行の流動性預金(ATM)などの重要な業務で利用されています。

例えば、私たちは給料日に給与の引き出しや口座振替などが出来ることは当たり前と認識していますよね。しかし、もし利用している銀行のシステムで口座振替のためのバッチ処理が時間内に終わらないと、その当たり前は簡単に覆されます。そこで、メインフレームのストレージに蓄積されている大量のデータ(Db2、IMS、VSAM、SMF、SYSLOGなど)を、AIや機械学習を活用して解析し、障害を事前に予測することができれば、処理遅延の予防や万が一のときの被害拡大を防ぐことができるようになります。

メインフレームでのAIや機械学習の活用シーンはバッチ突き抜け事前検知(過去の稼働実績から、オンライン開局時刻までに夜間バッチが終了しない可能性があることを検知する)以外にも、以下のケースなどがあり、多くの可能性を秘めているといえます。

  • 不正発注の事前検知
    想定外の大量発注をトランザクションログから検知する
  • IMS滞留事前検知
    想定を超えるトランザクションの発生により、IMSの実行キューへのトランザクションの滞留によるレスポンス悪化が発生する可能性を検知する

実際に、オンライントランザクションの振る舞いをリアルタイムに監視するインターフェースや、ワークロードの特性をAIに学習させるといった機能が既に実装されており、メインフレームでもAIが活用される時代が既に到来しているのです。

「運用効率化としてIBM zでのAutomationを考える」分科会

続いてご紹介するのは「運用効率化としてIBM zでのAutomationを考える」分科会です。こちらの分科会では、「IBM Tivoli NetView for z/OS」、「IBM System Automation for z/OS」の基礎や新機能、Ansibleによるインフラ構成自動化のデモや事例紹介を通じた勉強会が行われています。オープン系を含んだ様々な製品を利用した自動化を学び、先進的な自動化環境を構築するための足掛かりとなりました。普段は担当しているプロジェクトの知識に偏りがちですが、勉強会を通じ、新製品の機能や活用方法を知ることができ視野が広がります。

「女子会z 2019」分科会

最後に、「女子会z 2019」分科会についてご紹介します。こちらの分科会は、女性エンジニアの視点から見た「IBM zに携わるメリット」を語り合う会です。技術的な最新テーマだけでなく、働き方といった幅広いテーマを取り上げるなど、会社や部門の枠を超えたネットワーク作りの場として有効です。メインフレームに長年携わっていてもなかなか実物を目にする機会が少ないハードウェアの見学ツアーもありました。

さいごに

交流会の後に行ったアンケートでは、9割近くのメインフレーム技術者が「今後もメインフレームに携わっていきたい」と回答してくれました。また、メインフレーム未経験の参加者も「メインフレームに関する案件をやってみたい」と多数の回答もありました!日頃からメインフレームに従事している技術者としては嬉しいですね。これからもメインフレームの技術者を育成していくための取り組みを継続していきたいと考えています。

企業の情報システムのクラウド活用が進む中でも、金融機関における勘定系業務を始めとした基幹業務では、その堅牢性ゆえ今なお多くのお客様でメインフレームが利用されています。また、仮想化技術の多くはメインフレームで実装されそこから派生されたものがたくさんあります。ラックは、これからも社会インフラを支えるメインフレームソリューションを全面的に提供してまいります。

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