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ラックでECソリューションに携わる筆者が、2026年6月9日〜10日開催の「Agentforce World Tour Tokyo」の1日目に参加してきました。本稿は、AIで仕事の成果を伸ばしたいすべてのビジネスパーソンに向けたレポートです。
会場で何度も響いたのは「AIを配っても、会社は変わらない」という言葉でした。多くの企業がこぞってAIを導入しているのに、なぜ成果につながらないのか。そんな疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。その答えのヒントが、基調講演「Welcome to the Agentic Enterprise」に詰まっていました。
鍵となるのは、ツールそのものではなく、AIが力を発揮できる環境をどう整えるか、という発想の転換です。本稿では、基調講演で示された考え方を軸に、すでに成果を上げている企業の事例も交えながら、その理由と突破口を整理します。読み終えるころには、自社が踏み出すべき最初の一歩が見えているはずです。
「AIを配っても、会社は変わらない」基調講演が突きつけた問い
基調講演の冒頭、Salesforce Japanの小出会長は変化の速さを強調しました。ChatGPTはわずか2か月半で1億人に届き、この波はもうPoCやトライアルの段階ではなく、すでに実装し、成果を出すフェーズに入っていると語っています。だからこそ、AIをいかに使いこなすかが問われていると語られました。
その実現に向けて会長が掲げたのが、「4つのR」という指針です。仕事を捉え直す「リデザイン」、人が学び直す「リスキリング」、AIと人を適切に配置する「リデプロイ」、役割のバランスを取り直す「リバランス」。そして、これらを一度きりで終わらせず、改善を続けることが欠かせないと語られました。
なぜ、賢いAIでも成果が出ないのか
登壇者が投げかけたのは、シンプルで鋭い問いでした。AIは全社員に行き渡りましたが、それでも、ビジネスは変わっていないと。その理由は、意外にも身近なところにありました。
メールは速くなった。でも──
AIのおかげでメール返信は速くなり、議事録も自動でまとまるようになりました。日々の作業は、着実に効率化されています。けれども、売り上げや顧客体験といったビジネスの成果そのものは、思うようには変わらず、「便利になること」と「成果が出ること」の間には、深い溝があったのです。
足りないのは「AIの職場環境」
その溝の正体は、「AIエージェントが働くための職場環境が、社内に整っていない」ことでした。人が成果を出すには、必要なデータ、業務の流れ、同僚との連携、そして実行する権限が要ります。AIも同じです。ところが現実は、データが分断され、ワークフローとつながらず、権限もないため、これではどれだけ賢いAIでも力を発揮できません。
解決策は「AIに、人と同じ職場を用意する」
では、どうすればいいのか。Salesforceが示した答えが「エージェンティック・エンタープライズ・アーキテクチャ」でした。難しそうな名前ですが、考え方はシンプルで人と同じように働ける環境を、AIにも用意するということです。さらに驚くべきは、これが遠い構想ではなく、すでに各社で動き始めている事実でした。
仕組みと実例が示す、成果への道筋
ここからは、その「環境づくり」を支える仕組みと、実際に成果を出している企業の姿を見ていきます。通底するのは、AIを単体のツールではなく組織の一員として迎え入れる発想です。
人と同じ環境をAIに──アーキテクチャとHeadless 360
このアーキテクチャは、いくつかの層で成り立ちます。社内外のデータを届ける「Data 360」、業務を実行する「Customer 360」、数字の意味をそろえる「Tableau」、人とAIが一緒に働く「Slack」、開発と運用を担う「Agentforce」。申請や承認のように毎回ブレては困る業務を「決定論的」に動かせる点も実務的です。さらに目玉は、画面ログインなしで外部から機能を呼び出せる「Headless 360」。20分ほどで使えるAIチームメイト「Agentforce Coworker」も披露されました。
「もう実装は始まっている」──4社のデモと現場の知恵
基調講演ではAI活用による成果を示す4社のデモが披露されました。カナダグースは問い合わせ対応の約89%を自動化し、専門的な提案だけを人へ引き継ぎます。電通グループは調達業務の85%を自動化。かんぽ生命は深夜のコールセンターで家族の保険給付を数分で完了させ、技術が人の温度を消すのではなく深める姿を見せました。セッションのEC事例も濃く、ASICSはEC売り上げを10倍に、ワイヤードビーンズはAIを「新人スタッフ」として育て接客の達成率を14%から51%へ伸ばしています。
会場を出て確信したのは、AIで成果を出す分かれ道は「ツール選び」ではなく「環境づくり」が重要であるということです。まずは自社の業務で、データが分断されている箇所を1つ探してみてください。そこが、あなたの会社の出発点になります。小さく始めれば、AIは確かな仲間になります。メールが速くなるだけの毎日から、会社そのものが変わる毎日へ。次に事例として語られるのは、あなたの現場かもしれません。
次の一歩、エージェンティックコマースへ
基調講演が描いた「環境づくり」は、EC・コマースの領域では「エージェンティックコマース」という潮流としてすでに動き始めています。会員・購買・来店の履歴を一元化し、在庫や店舗受け取りの状況までリアルタイムに連携します。その土台の上で、AIが検索ではなく対話によって一人ひとりに最適な商品を提案します。
ASICSは足型などの計測データを顧客情報と組み合わせ、オンラインでも最適なサイズを推奨しています。ワイヤードビーンズは好みや背景をヒアリングしてから選ぶ対話型接客で、その精度を高めています。AIが商品選びから購入までを伴走する購買体験は、これからのECの新しい標準になっていくはずです。
その全体像をつかむ近道が、今回のオンデマンド配信です。参加したセッションの復習にも、見逃したセッションのキャッチアップにも活用できます。気になるテーマからで構いません。まずは映像で学びを深め、自社のコマースに「AIが働ける環境」をどう用意するか、構想を描くところから始めてみてください。
筆者の取り組み
筆者が所属するラックのECサービス部では、ブランド訴求型ECサイトを短期間かつセキュアに立ち上げる「Salesforce Commerce Cloud エクスプレス開発サービス」を提供しています。Salesforce Commerce Cloudを基盤に、アパレル・コスメ・宝飾品などのECを、ラック独自のテンプレートとセキュリティのノウハウで支援するサービスです。
このCommerce Cloudは、本稿で触れたエージェンティックコマースとも地続きです。AIエージェントが活躍する次の購買体験を見据え、私たちはエクスプレス開発サービスへのAgentforceの検証・導入も視野に、最新動向の収集と新サービスの検討を進めています。
ECサイトに足を運ばず、個人の端末にあるAIから買い物ができる。そんな時代は、そう遠くありません。きたるエージェンティックコマース時代に向けて、さらなる情報発信を続けてまいりますので、ぜひご注目ください。
オンデマンド配信のご案内
オンデマンド配信を開始しましたので、ご案内いたします。参加されたセッションの復習や、参加いただけなかったセッションのキャッチアップにぜひご活用ください。
【オンデマンド配信】Agentforce World Tour Tokyo | セールスフォース・ジャパン
※ 配信期間:2027年6月上旬まで約1年間
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