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フィンランドへの短期留学で見た生活と教育現場(前編)

クラウドサービス部の新山です。

私のキャリアに大きな転機をもたらしたのは、ラスベガスで開催された「AWS re:Invent 2023」でした。世界中のエンジニアが集まり、最先端のクラウド技術に触れたあの1週間は、今でも強く印象に残っています。

その後、AWSの案件に参画し、実務で着実にスキルを磨いてきました。同時に、英語力向上のためTOEICにも継続的に取り組み、いつか海外で生きた英語を学びたいと考えるようになりました。そして2025年9月、やりたいことを叶えるため、フィンランドへの短期ホームステイに挑戦しました。わずか1週間ではありますが、現地での生活や人との交流を通じて得た気づきを、前後編の記事でご紹介します。前編となる今回は、語学留学を決意するまでの経緯や、実際に準備したことについてお話しします。

少し先の有給、取れますか?

この語学留学の話をすると、必ずと言っていいほど「会社のお金で行けるの?」と聞かれます。残念ながら全て自腹です。そのため、有給休暇を使って行くことにしました。実は、これまでにも何度か語学留学を考えたことがありましたが、プロジェクトの進行状況を思うと上司に言い出せず、計画のまま終わってしまっていました。

語学留学に限らず、海外へ旅行したいけれどタイミングが難しいと感じている人も多いのではないでしょうか。特に海外は、数か月前から航空券や宿泊先を押さえる必要があり、自分の参画しているプロジェクトの状況を正確に読める人はほとんどいません。もちろん私もそのうちの1人でした。プロジェクトのトラブルは突然起きるものです。ただ、プロジェクトは自分1人で行っているわけではありません。チームには、上司や先輩、後輩といった頼れる仲間がいます。彼らがカバーしてくれるという信頼があったからこそ、今回ようやく行動に移すことができました。

9月という時期を選んだのは、ちょうどプロジェクトの区切りが見えそうだったからです。上司にも早めに相談し、次の案件の予定を確認した上で、「この期間は不在にします」と伝えました。ありがたいことに、快く背中を押してもらうことができました。案外、自分が思っているよりも、休暇を取ることはハードルが低いかもしれません。もし、まとまった休みを取らないと実現できないことがあるなら、健康で行動できるうちにぜひ挑戦してみてほしいと思います。

フィンランドのビーチ

何でフィンランド?

「語学留学」「短期」「1週間」などで検索すると、様々な留学プログラムがヒットします。最初に語学留学を検討したときは、カナダ、オーストラリアなど、英語が母国語の国をメインで探していました。フィンランドは候補にすら入っていませんでした。ところが、ある日ふと「フィンランドに語学留学してみたら」と勧められたことをきっかけに調べてみることにしました。フィンランドを最終的に選んだ理由はいくつかあります。

公用語でないのに、意外と高い英語力

日本では日本語が公用語で、英語は学校で最初に学ぶ外国語です。一方、フィンランドはフィンランド語とスウェーデン語が公用語で、日本と同じく、学校で最初に学ぶ外国語も英語です。しかもフィンランドは、国際教育プログラムを提供するEF(Education First)が発表している「世界各国の英語力ランキング(2024年版、英語を母語としない116か国対象)」で、14位にランクインしており、かなり高い英語力を持つ国であることが分かります。なお、日本は92位とかなり英語力が低い国と評価されています。

フィンランドが高い英語力を維持できている背景の一つとして、英語を学ばざるをえない環境があげられます。フィンランド語を母国語とする人は約500万人程度のため、洋画は吹替がほとんどなく、フィンランド語の字幕で視聴することがほとんどです。そのため、聞き流し英語のような状態で映画を見ることになるため、日本人よりも圧倒的に英語を聞く機会が自然と多くなるのではないかと思います。また、ゲームなどの娯楽コンテンツもフィンランド語の字幕が提供されていないものもあり、英語を理解できないと楽しめないという状況もあります。このような日常的に英語に触れる環境が、英語力ランキングに反映されているのかもしれません。

英語を公用語としている国ではなく、日本と同じように学校教育として英語を学びながらも高い英語力の国であるフィンランドで学ぶことは、英語力を伸ばすだけではなく、英語を学ぶ環境についても何か学びを得られるのではないかと思いました。

教育現場を自分の目で見るチャンス

英語力ランキングだけ見ると、フィンランドは現在14位なので、もっと上位の国もあります。しかし、私がフィンランドを語学留学に選んだ最大の理由は、「教育視察」というオプションがあったことです。実際に現地に赴き、教育現場を自分の目で見ることで、学ぶ環境をより深く理解したいと思ったのです。

私はシステムエンジニアをしていますが、母が幼稚園で働いていることもあり、幼児教育にとても興味がありました。振り返ると、私が社会人になっても英語を学び続けてこられたのは、子供のころに「学ぶ楽しさ」を知ることができた経験がとても大きいと思います。水泳やピアノなどの習い事や学習塾への通塾などの経験をさせてもらったことで、達成感や仲間との楽しさを感じながら学ぶ意欲が育まれました。もちろん、行きたくない日も、やめたいと言ったこともあります。それでも「できなかったことができた」という達成感や、そこで仲良くなった友達と遊ぶ楽しさといった多面的な経験が、学ぶ意欲を高めてくれたように思います。

一方で、世の中には学力格差の問題があり、ニュースで目にすることがあります。そんな時、海外の教育現場を直接見る機会は、いわば「外の世界を知る」絶好のチャンスだと感じました。そこで、フィンランドへ語学留学をしながら、教育視察もできるプログラムに参加しようと決めたのです。

フィンランドの電車からの景色
フィンランドの電車からの景色

フィンランドへ行くまでにやったこと

フィンランドへの語学留学を正式に決めたのは2025年5月でした。現地へ行くまでに準備したことをまとめましたので、語学留学をする方だけでなく、英語に興味がある方や海外旅行に行きたい方の参考になれば幸いです。

留学貯金

私が語学留学を志したのは、実は、2023年にラスベガスに行くより前でした。いつか行けるといいなと思ってから、毎月決まった金額を留学貯金として貯めていました。順調に貯金もたまり、もしラスベガスに行かなかったら、そのタイミングで仕事を辞めて、1週間よりも長期間の語学留学に行っていたかもしれません。それほど、海外で英語を学び、実際に話す経験は私にとって大切なものでした。英語にコンプレックスがあったからこそ、挑戦したいという気持ちが強かったのです。

留学貯金をすることで、漠然と思い描いていた夢を現実にするための行動が具体的になりました。普段の生活費や趣味のお金とは別に、目的のために貯金をすると、そろそろ使うぞ!という意識が生まれ、現実的に動き出すことができます。やりたいことにお金も時間も必要な場合は、コツコツでも無理のない範囲で準備を始めるのもおすすめです。小さな積み重ねが、大きな挑戦につながると感じました。

TOEIC受験

ラスベガスに行って以降、英語に対する熱量を高い状態で維持することができた要因としてTOEIC受験があります。会社で年に2回、TOEICの団体受験の機会があります。会場で受けるTOEICテストとは違い、自宅から受験可能、試験時間も1時間半、受験料も通常受験よりもお得です。以前から団体受験は知ってはいたものの、そんなにスコアも良くないだろうから受けるのは恥ずかしいと思っていました。

しかし、ラスベガスでの1週間を経験してからは、自分の英語力をもっと上げて、次にAWS re:Inventに行ったときは、AWSの知識だけでなく、他の国ではどんなプロジェクトがあるのか、どんなことをAWSで実現させているのか、聞きたいことを英語で会話したいと思うようになりました。

もちろんTOEICのスコアが良ければ会話に支障がないと明言するものではありません。しかし、TOEICのスコアが上がることで、少なくとも自分の英語力に対する自信には繋がります。英会話スクールで話す練習も役立ちますが、会話だけでは自分の英語力を客観的に測ることが難しく、モチベーションを保つのは意外と大変です。TOEICのスコアは自分の中で「英語が得意と言えるくらいまで来たかな」という指標になりました。特に、「今年は短期でも語学留学するぞ」と動き出してからのTOEIC受験は、今まで以上のスコアアップを結果として残すことができました。

フィンランドを知る

今回のフィンランド渡航は、私にとって初めてのヨーロッパ訪問でした。そのため、事前に自分の興味に沿って、いくつかフィンランドに関する本を読みました。本に書かれていることが全てではありませんが、出発前にある程度の知識をインプットしておくと、実際に目にしたこととのギャップを感じやすくなります。初めて行く場所は、ガイドブックでもいいので何かしらインプットをすることがおすすめです。その中で、日本と考え方や制度が異なるな、と感じたことを紹介します。

保育園は誰のための場所?

日本の保育園は、"親が"仕事をするために子供を預ける場所という意味合いが強いような気がしますが、フィンランドでは、"子供が"社会性や想像力を育てる場所という位置づけで、親の就労状態に関係なく、無償、もしくは低額で通うことができます。日本では、親の就労状態などが点数化され、保育園に入るには共働きの方が優遇される傾向にあり、通うのは子供のはずなのに、親主体の制度になっている印象を受けます。今回の語学留学では教育視察も兼ねていたので、保育園は誰のための場所なのかという問いについて、深く考える貴重な機会になりました。

助けてほしいときは自分から!

フィンランドの人々は、他人に干渉しすぎないというプライバシーを尊重する文化が根付いていると本を読んで知りました。困ったときには、遠慮せずに自分から助けを求めることが重視されており、プライバシーを尊重しつつも、必要なときは親切に対応してくれます。私自身も仕事で、相手に自分の説明や指示がきちんと伝わっているのか意識的に確認し、助けが必要な人に気付くよう心がけています。本を読んだ限りでは、フィンランドでは日本以上に自分から声を上げていく必要性を感じました。この文化は個人の自立を促し、助け合いの質を高めているように感じます。自ら声を上げる積極性が、信頼される行動として評価されている点も参考になりました。

ウスペンスキー大聖堂
丘の上にあるウスペンスキー大聖堂 in Finland

伝えたいフレーズを調べる

海外はこれまで何度も行ったことがありますが、ホームステイは今回が初めてでした。普段の旅行では気にならないことや、ホームステイなので率先した手伝いなど、旅行のときには使わない会話が必要になることが想定されます。例えば、ごみの分別方法や、ご飯を作ってもらったときの洗い物対応などです。その場ですらすら話せたらよいのですが、事前にこういう言い方ができるというのを、自分なりにメモでまとめました。

その他に、フィンランドではフィンランド語でのあいさつや、お礼といった基本的な表現もメモにしました。Google翻訳を使うと、音声も聞けるので、フィンランドでのあいさつにはとても役立ちました。英語も、日常会話には困らなくなったと思っていたのですが、ホームステイ先で確認したいことなどを書き出すと意外と必要な表現が多いことに気づきました。旅行をするのと、現地で暮らすのでは必要なコミュニケーションの質が大きく違うと準備をしながら感じました。

さいごに

ここまでが、私がフィンランドへ語学留学に行こうと思った経緯と、行くまでの準備です。短期ではありますが、語学留学もホームステイも初めてだったので、事前に自分なりのインプットを行ったことが大きな助けになりました。現地ではアウトプットしながら、新たな発見や学びも多く得ることができました。後編では、フィンランドで体験して感じたことを紹介したいと思います。

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