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フィンランドへの短期留学で見た生活と教育現場(後編)

クラウドサービス部の新山です。

前編では、有給休暇を利用して短期の語学留学に挑戦する経緯と、それに向けた準備について紹介しました。今回は、実際にフィンランドで体験して感じたことや気づきを、皆さんと共有したいと思います。

いざ!フィンランドへ

行きの飛行機はほぼ満席で、窓側の席だったため12時間のフライトが少し心配でした。しかし、ラスベガスへ行ったときよりもリラックスでき、それなりに睡眠もとることができました。隣の席は外国の方だったので、出発早々英語でコミュニケーションを取ったことが軽いウォーミングアップにもなりました。

ホストマザーとの生活

私のホストマザー(以下、マザー)は、とにかく忙しい人でした。私が到着した日には帰国する高校生がいたため、最初のレッスンは高校生と一緒にゲームをしながら行いました。1対1のレッスンではなかったことで緊張が和らいだように思います。また、ホームステイのタイミングが他の人と重なることはあまりないと思うので、貴重な経験だったと思います。

マザーはホームステイとしての受け入れだけでなく、英語教師としての授業も複数持っていました。それに加え、アイルランドダンスやピラティスなど体を動かす趣味のレッスンにも参加していました。夜になってようやく自分の時間が取れるため、私が寝た後も次の日の授業の準備やメールの返信で遅くまで活動していたようです。そんな中で私を1週間受け入れてくれたことは本当に感謝しかありません。

マザーが忙しかったおかげで、私は1人の時間も満喫でき、観光しながら英語を学ぶ1週間が過ごせたと思います。また、マザーは犬1匹と猫2匹と生活しており、猫2匹と暮らしている私としてはペットロスにならない最高の時間でもありました。彼らとはすぐに仲良くなれて、私の足の上でくつろいだり、一緒に寝てくれたりと幸せな時間を与えてくれました。さらに、食事も可能な限り一緒に取り、私がリクエストしたサーモン料理も作ってくれるなど、現地の暮らしを満喫しながら楽しく過ごすことができました。

ホームステイ先の家族
ホームステイ先の家族

図書館以上の図書館

滞在期間中、ヘルシンキを中心に様々な場所を訪れました。その中で衝撃だったのがOodiという図書館です。ここは図書館でありながら図書館以上のサービスを提供する複合施設のような場所でした。日本で図書館と聞いて想像するのは、本がたくさんある静かな場所かと思いますが、Oodiはカフェも併設され、おしゃべりもOKという日本の図書館とはまったく異なる雰囲気でした。

友達とパソコンを使いながら雑談をしている人たちがいると思えば、ボードゲームをしている人たちもいました。この図書館には本だけでなく、ボードゲームまで置いてあり、友人と気軽に楽しめる空間になっています。さらに個室も多く、そのうちのいくつかはテレビゲームができる部屋もありました。また、ミシンや3Dプリンターも無料で使用できます。図書館の目の前の広場で遊ぶためのバスケットボールなどの貸し出しもあり、子どもから大人まで多様な活動ができる場所になっています。

蔵書も豊富で、外国語エリアが設置されており、日本語の本だけでなく様々な言語の本が貸出し可能です。マンガコーナーではフィンランド語版の『名探偵コナン』も見つけました。図書館の本棚は日本のように高く積み上げられておらず、だいたいどの本棚も胸くらいの高さで、図書館の空間の広さをいつでも見渡せる設計も新鮮でした。

キッズスペースも併設されており、赤ちゃんの泣き声が聞こえる賑やかな環境で、日本の静かにしなければいけない図書館とは全く別の場所でした。なお、キッズスペースはマクドナルドや船に乗るための待合室のような場所にも設置されており、子どもが受け入れられる場所が街中に多いことに驚きました。マザーに教えてもらったのですが、バスや電車の運賃はベビーカーを使用する子どもがいれば親は無料で乗れるという制度もあるそうです。こうした設備や制度だけでなく、周りが自然と受け入れて生活している雰囲気が、フィンランドの未来を支えているのだと感じました。

Oodi図書館内観

英語のレッスン

だいたい1日2時間授業を5日受け、合計10時間英語レッスンがありました。とはいえ、日常会話は全て英語なので、実際にはそれ以上に学んでいる感覚です。最初に学びたいことなどを聞かれ、私は「知らない単語を会話の流れで推測できるようになりたい」「単語を丸暗記するより、使いながら身につけたい」と伝えました。文法の正確さよりも、自然な会話の流れを重視したかったのです。そのため、授業は日常会話の延長のような形だったので、あっという間に2時間が過ぎていました。

レッスンは基本的にマザーが質問を投げかけ、私がそれに答えて会話を広げていくことが多かったです。やり取りの中で文法や発音の間違いを指摘してもらい、正しい英語に直していきました。会話の話題は私やマザーの家族の話だけではなく、留学先にフィンランドを選んだ理由や、幼児教育にまで広がり、日本とフィンランドの制度や文化の違いについて話すことができました。日常会話から、それぞれの国の制度や病院の受診の仕方など、日本とフィンランドの違いについても触れることができ、語学学校とは違う学び方がとても面白かったです。

私は事前に日本人が書いたフィンランド移住や教育に関する本を読んでいたので、「こんな本を読んで、こんなことに興味がある」ということも伝えました。自分が日本で感じたことを英語で伝えるのは少し難しかったのですが、マザーが共感してくれたり、自国の視点から補足してくれたりと、想像以上のインプットを得られたような気がします。

最終日のレッスンは、1週間の振り返りをプレゼンする時間にしました。パワーポイントで英語の資料を作成し、英語でプレゼンをするというのは初めての経験で、学びを整理しながら自分の成長を実感できる時間でもありました。プレゼンでは準備した原稿をただ読むのではなく、マザーの反応を見ながらその場で言葉を補ったり、感想を添えたりしながら話すことで、実践的な表現力を試す良い機会になりました。日本でのプレゼンとは違い、「伝わること」に意識を向けた経験は、これから英語を使う上での自信にもつながりました。

最終日に作成したプレゼン資料
最終日に作成したプレゼン資料

学校視察

私が行った学校は、マザーの家から歩いて行ける小学校でした。マザーが多忙のため、前日の夜に犬の散歩をしながら学校までの道を教えてくれたのですが、街灯の少ない夜道は少し心細く、翌朝無事にたどり着けるか不安でした。それでも、文明の利器に助けられ無事に到着。門をくぐると、そこには日本の学校とは違う雰囲気が広がっていました。この学校視察で驚いたことをいくつか紹介します。

新鮮な空気を吸うことを大事にしている

私が行った日は特別な日だったので、いつもより授業の開始が1時間遅かったのですが、その時間になるまで教室は誰も入れませんでした。時間になるまで外で遊び、時間になってから先生が教室の鍵を開けて生徒が教室に入るのが1日の始まりのようです。日本では時間までに着席して先生が来るのを待ちますが、フィンランドではそもそも教室に入れません。先生がそのために早く来ることもないので、システムとして時間の区切りがとても明確です。

教室が施錠されるのは防犯のためでもありますが、もう1つ大きな理由は外に出る文化です。移動教室以外の中休みや昼休みも必ず全員外に出なければいけません。雨や雪の日でもレインコートを着て外で過ごします。これは、新鮮な空気を吸うことをフィンランドの人は大事にしているからだそうです。外に出たら、サッカーをする子もおしゃべりを楽しんでいる子もいました。私が行った日は、少し寒かったのですが天気は良かったので、これが雨の日や雪の日だったらどんな光景になったのか気になりました。

読書を習慣化させている

私が見学した授業の1つはテストでした。小学3年生のクラスだったのですが、テストの始まりに先生が各問題の説明をしていることに驚きました。テストが終わると、「提出したら読書の時間にしてください」という指示が黒板に書き足されていました。早く終わった子どもたちは答案を提出して、自分の引き出しから本を取り出し、静かにページをめくりはじめます。自分の本を読み終えた子は、教室から出て図書館に行き、新しい本を借りて教室で読むこともできます。自分のペースで学びを進める自由さと、本への好奇心を尊重する環境がありました。

私が最も読書を大事にしているのだなと感じたことは、生徒が自分のしおりを持っていたことです。どのしおりも手作りで、色を塗ったり絵を描いたりして自分だけのしおりに仕上げていました。そのしおりを大切に使い続けている姿から、子どもたち一人ひとりが本を読むことを心から楽しんでいると強く感じました。

給食は自分の好きなものを好きなだけ食べる

給食のスタイルも日本とは異なります。教室ではなく食堂で食べますが、食堂はさほど広くないため、クラスごとにお昼を食べる時間がその日ごとにずれて設定されています。食堂に行き、自分の食べたいものを食べられる量を各自でよそい、20分ほどで給食の時間は終わります。

私が訪れた日は、オレンジと野菜スティック、スープが3種類、パンでした。スープは3種類の中から自分で選ぶのですが、これは多様な宗教や文化を尊重するための工夫でもあります。全員が同じ食事をとるのではなく、それぞれの信念や好みに合わせて選べる仕組みです。実際、イスラム教と思われる子どもや、肌や髪の色がさまざまな子どもたちが一緒に食事を楽しんでいました。違いを特別視せず、自然に受け入れる空気が印象的でした。他にも驚くことはたくさんありましたが、日本との違いは短い時間での学校視察でも感じ、とても学びある時間でした。

見学させていただいた教室風景
見学させていただいた教室風景

おわりに

1週間はあっという間でした。初めてのフィンランドで不安もありましたが、ラスベガスの時に1人で乗り継ぎをしてホテルまで行ったこと、知らない街を1週間歩き回った経験が思いのほか自信につながっていました。外出は基本1人でした。自分の気の向くままにヘルシンキの街を歩き、気になった場所にふと立ち寄るという自由な時間が心から楽しかったです。観光ではなく、その国で暮らすことで見えてくる日常の景色も新鮮でした。また、授業も私の英語力や興味に合わせて柔軟に組み立ててもらい、語学学校の授業とは違う自分だけの学びを得られたように思います。

私の英語への学びは終わりではなく、まだ通過点です。挑戦を後押ししてくれた上司、快く送り出してくれた同僚への感謝の気持ちは尽きません。私が過ごした1週間は有給休暇でありながら、ずっと英語漬けの心地よい疲労感を伴うものでした。やりたいと思ったことを叶えることができ、仕事への活力にもつながりました。AWSスキルは発展途上かもしれませんが、自分の意見を言える英語力は私の強みになり、たくさんの経験が自信になっていくことを信じています。そして次は、私が誰かの挑戦を支える番です。私を送り出してくれたように、仲間が安心して休暇を取れるよう、技術でも体制でも支えられる存在でありたいと思います。

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