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働きながら大学院へ!学び直しのすすめ

こんにちは。サイバー・グリッド・ジャパンの鈴木悠です。

2020年の春、コロナ禍で緊急事態宣言が発令される中、学術的な観点から人とサイバーセキュリティについてより深い研究をするために大学院へ入学しました。そんな大変な時期に......、と思われるかもしれませんが、テレワークの拡大など働き方の変化も追い風の一つとなり、社会人学生として働きながら大学院博士前期課程を無事修了できました。

情報セキュリティ大学院大学の大学院博士前期課程を無事修了できました

この記事では、仕事と大学院、家庭の三つ巴の生活において、どのように困難を乗り越えてきたのかをお話ししたいと思います。

きっかけは、研究職へのジョブチェンジ

2006年ラックに新卒入社をしてからは、セキュリティコンサルタントやセキュリティエンジニアとして、お客様へセキュリティサービスを提供してきました。働きながらの出産と育児で直面したことは、子の看護休暇や行事参加による稼働時間の減少で、現状維持以上の仕事の成果を出す困難さでした。子育て中の稼働時間については、LAC WATCH記事の「子育てをしながら働くということ」、「いま一度働き方を考える~ライフステージに合わせた働き方の選択~」にて実績値をお伝えしています。

その解決策として、2018年に研究職へジョブチェンジしました。自分の関心事や得意分野を仕事にすることでモチベーションを高め、生産性の向上も見込めると判断したからです。私は大学生の時に社会心理学を学んでいたので、その知識をサイバーセキュリティの世界に登場する攻撃者や、IT利用者といった「人」に関する研究に応用することは、研究としての希少価値が高いと考えました。

しかし、この希少性には欠点もあります。それは、客観的なレビューが得られにくく、せっかくの研究が独りよがりなものになってしまい、研究の質が担保できない可能性です。研究職となって2年目の夏にこのような課題を感じはじめ、考えた末に、その翌4月に大学院へ入学することに決めました。これまでの私の人生設計には大学院という選択肢はなかったので、40歳を目前に控えた新たな挑戦です!

会社、大学院、家庭、三つ巴の暮らし

私の研究の三本柱は、サイバーセキュリティ・心理学・安全保障です。このような複数分野にまたがる研究への指導が得られ、文系出身者でも履修しやすい科目があり、平日夜間・土曜日に通える大学院という条件から、情報セキュリティ大学院大学へ入学しました。平日昼間は、会社でサイバー攻撃の攻撃手法や海外の政府機関・セキュリティベンダーが発行するレポートなどを調査・分析します。平日夜間や土曜日は、大学院の授業を受講しつつ学術的な側面からセキュリティを守るための研究をするという棲み分けです。

大学院に入学した当初は、ちょうど新型コロナウイルス感染拡大の第1波が来ていました。子どもが通う保育園、小学校、学童も臨時休校となり、会社では「子の休校に伴う特別休暇」の取得が可能となりました。子どもの学習支援や育児、家事のために特別休暇を取りつつ、新生活のタイムスケジュールを家族で共有して、習慣化していきます。

新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から仕事も大学院もリモートとなりましたが、それにより通勤(往復2時間)と通学(往復3時間)の時間が浮き、それらの時間を子どもの寝かしつけや課題レポートの作成にまわせました。私たちの働き方や生活様式は大きく変化しましたが、その変化は必ずしも悲観的なものだけではなく、上手く取り入れることもできるという気付きも得られました。

もちろん大変だったこともあります。特に、平日の夜は週2~3日で21:30までの授業を履修していたため、保育園や学童のお迎えから就寝を、家庭内で曜日担当制にして乗り切りました。最初は、リモート授業中に「いつ終わるの?まだ終わらないの?」と何度も声を掛けに来ていた子どもたちも、次第に「今日はお母さん20時から授業でしょ!それまでにお風呂入っちゃおう!」と協力してくれるようになりました。小学生になると「学校は授業を受けるところ」という認識ができるので、理解が得られやすくなったようです。また、レポート課題が出ることもありますが、これまでの業務知識や経験を存分に発揮して取り組めます!

研究を通じて社会に貢献したい

私の研究テーマは、「ディスインフォメーション(Disinformation)」です。CODE BLUE 2020講演の半年後、日本のディスインフォメーションの定義は「あらゆる形態における虚偽の、不正確な、または誤解を招くような情報で、設計・表示・宣伝される等を通して、公共に危害が与えられた、又は、与える可能性が高いもの」とされました(Disinformation対策フォーラム)。ソーシャルメディア上での、新型コロナウイルスに関する不確かな情報の蔓延や、昨今ではウクライナ侵攻に関連するディスインフォメーションが流布されていることが複数の海外企業から指摘、報告されています。

私の研究では、このディスインフォメーションをソーシャルメディア上で拡散してしまう「人」に焦点をあてています。心理学的な側面からディスインフォメーションの拡散要因を明らかにし、共有行動を低減させるための「人へのアプローチ」による有効策の検証、提案をします。なぜなら、ディスインフォメーションにより惑わされてしまう人を減らし、ユーザやコミュニティ同士での無益な論争や対立を生み出したくないからです。自分でも理想論だとは思っているのですが、規制や制限を設けずに、個々人が望ましいと考える自発的な行動により問題が解決されるような心理学や行動経済学を応用した仕組みを作りたいと考えています。

このような、社会へ貢献したいという動機は、第一子を生後6ヶ月で保育園へ預けて職場復帰をした頃から徐々に高まっていました。子どもを預けてまで働くことに社会的意義を見出したいという、私の深層心理に由来しています。

これからのライフステージ

これまでの研究をさらに推進するために、情報通信分野を専門とする日本で唯一の公的研究機関、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のサイバーセキュリティ研究所へ出向しています。また、この4月からは情報セキュリティ大学院大学の博士後期課程にも進学しました。博士号を取得できる自信があるかというと微妙なのですが、挑戦することが未来につながると思っています。

私の通う大学院では、20代から60代まで幅広い年齢層の方が研究に取り組んでいます。学びや挑戦に早いも遅いもありません。このコロナ禍だからできそうなことにどんどんチャレンジしていきましょう!

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