LAC WATCH

セキュリティとITの最新情報

RSS

株式会社ラック

メールマガジン

サイバーセキュリティや
ラックに関する情報をお届けします。

Facebook X Instagram
サービス・製品 | 

RAGの運用に困ったら?HeatWave GenAIのすすめ

AIエンジニアリンググループの加藤です。

近年、生成AIの活用が進む一方、業務への具体的な導入方法や運用にはまだ多くの課題が残っています。特に、検索拡張生成(Retrieval Augmented Generation:以下、RAG)の運用においては、データの移動や管理の複雑さ、コスト効率の低さが大きな壁となることが少なくありません。

そのような課題を解決するために、オラクルが提供する「HeatWave GenAI」が注目を集めています。HeatWave GenAIは、生成AIを活用するための環境を、セキュアかつ効率的に構築できるソリューションです。HeatWave GenAIの概要やHeatWaveを使ったRAGの構築方法については以下の記事をご覧ください。本記事では、HeatWave GenAIの基本的な特長や具体的なユースケースをご紹介します。

HeatWave GenAIの最新情報(2025年7月時点)

上記の関連記事では、社内FAQをシナリオとして検証を行いその結果を紹介しました。その際に日本語対応に問題があり、精度面でも課題が残るとお伝えしましたが、この数ヶ月間でHeatWave GenAIは大きく進化しました。インデータベースLLMの性能が向上し、日本語での質問にも問題なく回答することが可能です。

実際に、前回の検証で失敗した複雑な質問にも、正確に答えられることを確認しています。

社内FAQをシナリオとして検証を行った結果

HeatWave GenAIの具体的なユースケース

HeatWave GenAIの特長的な機能を活用すると、業務の効率化や課題解決にどのように役立つのでしょうか。ここでは、「営業部の提案文生成自動化」と「部署ごとのRAG運用」という2つの具体的なシーンを通じて、その可能性をご紹介します。

ユースケース① 営業の提案文生成

営業活動では、顧客ごとにカスタマイズした提案文を迅速に作成することが重要ですが、通常は多くの時間と労力を要します。また、そのフェーズで生成AIを活用する場合、顧客情報や製品情報といったデータベースに登録されているテーブルデータが必要になりますが、生成AIでテーブルデータを処理させるためには、一度データを外部に移動して処理する必要があり、セキュリティリスクや運用コストが課題となります。

HeatWave GenAIでは、データベース内で直接テーブルデータをベクトル化でき、そのままRAGのデータソースとして活用できるため、データ移動の手間を省き、迅速かつセキュアな営業活動の支援が可能です。

営業の提案文生成イメージ
営業の提案文生成イメージ

従来のRAGではテーブルデータを一度取り出す必要がありますが、HeatWave GenAIを用いるとテーブルデータをそのままベクトル化できるため、少ないステップ数でテーブルデータを参照するRAGシステムが構築できます。

従来のRAGとHeatWave GenAIにおけるテーブルデータ埋め込みプロセスの違い

今回は一例として営業活動支援をあげましたが、テーブルデータを参照するRAGであれば、HeatWave GenAIこそが有効なユースケースになります。

ユースケース② 部署別RAG

企業内の複数の部署が異なる業務データを扱う場合、それぞれのニーズに合わせてRAGを活用するのは容易ではありません。特に、リソースのコストやアクセス管理の複雑さが課題となりがちです。HeatWave GenAIにはRAGに必要なLLMやベクトルストアがデータベース内に搭載されているため、従来のRAGに比べてRAG環境を少ないリソースと低コストで構築できます。

従来のRAG
従来のRAG
HeatWave GenAIによるRAG
HeatWave GenAIによるRAG

さらにOCI独自のリソース管理の単位である「コンパートメント」を活用することで、簡単にアクセス管理を設定できます。また、コンパートメントごとに費用の管理も可能なため、部署ごとのコスト管理も容易に行えます。

「コンパートメント」を活用したアクセス管理のシステム構成

今回はHeatWave GenAIの特長を活かした特定のユースケースを紹介しましたが、HeatWave GenAIはRAGの一般的なユースケースである文書検索においても、高い能力を発揮します。

HeatWave GenAIの今後の可能性

HeatWave GenAIは「RAGをデータベース内で完結させる」という構造的イノベーションにより、従来のRAGが抱える多くの課題を解消しています。加えて、機械学習を行うHeatWave AutoMLとの連携や対応言語の拡充など、回答精度向上のためのアップデートが頻繁に投下されており、回答の質を継続的に高めながら運用コストを下げるプラットフォームとして進化し続けています。

また、OCI上に構築したHeatWaveは他クラウドプラットフォームとも容易に接続可能なため、マルチクラウド環境における柔軟な構成や既存システムとの連携も実現しやすくなっています。これにより、OCIに依存せず、既存のクラウド戦略に応じた活用が可能です。

私たちは、お客様の課題のヒアリングからHeatWave GenAIの検証、導入までを一貫して支援します。これまでに多様な業種・業務で生成AIの導入をサポートしてきた実績があり、その中で培った知見をもとに、目的や環境に応じたセキュアで最適な導入を実現します。HeatWave GenAIやその他AI技術にご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

プロフィール

加藤 央彬

加藤 央彬
お客様向けに生成AIの活用支援を行っています。G検定を保有。今後は生成AIの利活用に関する情報発信を行い、最新技術の普及と促進に貢献します。

この記事は役に立ちましたか?

はい いいえ

page top