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ゼロトラストで実現した、公共機関のDXとセキュリティ強化
国民生活センターは、消費者や生活者、事業者、行政を「たしかな情報」でつなぎ、公正で健全な社会と安全・安心な暮らしを支える中核的な機関だ。その基盤となるのが、全国から寄せられる消費生活相談を収集・分析するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)をはじめとする情報システムであり、その安定運用は消費者行政を支える重要な役割を担っている。こうした社会インフラを支えるため、同センターはLANシステムを全面刷新し、デジタル化による業務効率化や多様な働き方への対応に加え、高度化するサイバー脅威への備えとして情報セキュリティを強化した。
本プロジェクトでは、業務効率と高いセキュリティを両立し、全職員が安全かつ柔軟に働ける環境の実現を目指した。政府の情報セキュリティ基準に準拠したクラウドサービスを採用するとともに、ゼロトラストアーキテクチャに基づくセキュリティ設計を採用。20種類以上のサービス・製品を組み合わせ、将来の拡張性も見据えたシステム基盤を構築した。
公共機関としての厳格なセキュリティ要件を満たしながら、システム刷新をどのように実現したのか、本プロジェクトについて、国民生活センター情報管理部の担当者に話を聞いた。
インタビュー協力
河岡 優子氏
情報管理部 次長
梅田 眞弘氏
情報管理部 情報システム課 課長
サイバーセキュリティ・情報化推進課 調査役
尾之上 祐吾氏
情報管理部 情報システム課 課長補佐
サイバーセキュリティ・情報化推進課 課長補佐
消費者・生活者、事業者、行政を「たしかな情報」でつなぐ
悪質商法や製品事故、契約トラブルなど、消費者を取り巻く問題は日々変化している。その最前線で全国の相談情報を集約・分析し、消費者行政を支えているのが国民生活センターだ。同センターでは、全国約1,200か所の消費生活センターから寄せられる相談情報を収集・分析し、その結果をもとに消費者への注意喚起や事業者への改善要請などを行い、消費者トラブルの未然防止に取り組んでいる。
「消費者トラブルは一人ひとりの問題に見えても、全国規模で見ると同様の事象が発生していることも少なくありません。相談情報を集約・分析し、消費者の皆様に向けて注意喚起を行う等、社会全体へ還元していくことが私たちの重要な役割です。」と河岡氏は語る。
こうした活動を支えているのが、年間約90万件の相談情報を蓄積し、全国の消費生活センター等を結ぶPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)をはじめとする情報基盤だ。社会インフラともいえるこれらシステムの安定稼働は、迅速な消費者保護と消費者行政の実効性を支える重要な基盤となっている。
DX推進と働き方改革がシステム刷新の契機に
国民生活センターがLANシステムの全面刷新を検討した背景には、DX推進、働き方改革、そして高度化するサイバー脅威への対応という3つの目的があった。業務効率や情報共有をさらに高めるには、個別システムごとの改善ではなく、システム全体を見直す必要があった。
また、大きな転機となったのはコロナ禍である。在宅勤務の需要が急速に高まったものの、利用できる端末数やリモートアクセス環境には制約があった。「在宅勤務をしたくても環境面の制約で十分に対応できない状況がありました。今後の働き方を考えるうえで、システムの見直しは避けて通れませんでした。」と梅田氏は振り返る。
コミュニケーションツールの導入により一部の課題は解決できるものの、根本的な業務環境の改善にはつながらない。場所を問わず必要な情報に安全にアクセスでき、柔軟な働き方を実現するには、ネットワークや認証基盤を含めたIT環境そのものの刷新が不可欠だった。さらに、クラウド活用の拡大に伴い、従来の内部ネットワークを守る境界防御型セキュリティだけでは十分とは言えなくなっていた。テレワークやクラウド利用を前提とした環境では、社内だから安全という考え方から脱却し、アクセスごとに信頼性を確認するゼロトラストへの転換が求められていた。
こうした課題を踏まえ、国民生活センターは「デジタル化による業務効率化」「多様な働き方改革への対応」「情報セキュリティ強化」を同時に実現するため、LANシステムの全面刷新を行うこととした。
ゼロトラストという新たな選択
クラウドサービスの活用を前提とした今回の刷新では、従来の境界型セキュリティだけでは十分な対策とは言えなかった。そこで採用したのが、すべてのアクセスを検証・制御するゼロトラストアーキテクチャという考え方である。しかし、ゼロトラストは製品を導入するだけで実現できるものではない。クラウドサービスやネットワーク、認証、エンドポイントなどを最適に組み合わせ、運用まで見据えた全体設計が求められた。
「初期の検討段階では、クラウド活用やゼロトラストの考え方は理解していました。ただ、それを実際のシステムとしてどう構成し、どの製品やサービスを組み合わせれば実現できるのかは手探りで検討を進める状況でした。」と、尾之上氏は振り返る。
セキュリティ製品には非常に多くの選択肢がある。重要なのは製品単体の性能ではなく、それらを有機的に組み合わせ、現実的かつ運用可能な仕組みとして設計しゼロトラスト環境を実現するトータルなシステムデザイン力とその実現性の高さである。
「当センターの要望を踏まえ、要件の整理・具体化を行っていただきました。また、複数の製品や技術を組み合わせたゼロトラストセキュリティの構成について、具体的な提案がなされ、全体像を理解する上で参考となりました。さらに、将来的な拡張性やガバナンスにも配慮した内容となっており、システム整備の方向性を検討する上で有用な提案でした。」と梅田氏は語る。
提案内容には、Netskope、Cisco、Box、Microsoft 365など20種類以上の製品・サービスを組み合わせながら、ラックのSOCサービス(JSOC xPDR)を含む一気通貫のセキュリティ運用まで見据えて提案した。設計段階では、関係者との議論や検証を重ねながら要件をブラッシュアップし、ゼロトラストの考え方を現場で機能する仕組みへ落とし込み、実運用に耐えうるシステム設計を完成させた。
公共機関ならではの説明責任と大規模プロジェクト推進
公共機関のシステム調達や意思決定においては、高い透明性と説明責任が求められる。なぜその構成を採用するのか、なぜその製品・サービスが最適なのかを、セキュリティや利便性だけでなく、運用性や災害時の事業継続まで含めて説明できなければならない。
さらに、本プロジェクトは、それぞれ異なる専門性を持つベンダーと連携しながら、全体最適を実現するためには、関係者全員が同じゴールを共有できるプロジェクト運営が欠かせなかった。そのため、定例会や勉強会を通じた認識合わせに加え、アクセス権や運用ルールの整備など、導入後を見据えた体制づくりにも力を入れた。また、国民生活センターが消費者行政を支える情報基盤を担う組織である以上、システム停止は社会的な影響につながりかねない。構築や移行の期間中も業務を止めることなく、安全かつ確実に切り替えることが絶対条件だった。
「国民生活センターの業務は、消費者行政を支える重要な情報基盤の上で成り立っています。システム停止が社会的影響につながるおそれがある緊張感の中で、一つひとつ課題を解決しながらプロジェクトを進めました。」と梅田氏は振り返る。
安定稼働と高いセキュリティを実現
LANシステム更改は、綿密な設計と段階的な移行計画のもと、業務への影響を最小限に抑えながら計画どおり完了し、現在もシステムは安定稼働を続けている。「大きなトラブルなく運用でき、職員が安心して利用できる環境が整いました。」と梅田氏は語る。
導入効果として特に大きいのは、セキュリティの強化と働き方の変革だ。梅田氏はさらに、「ゼロトラストアーキテクチャを採用したことで、クラウド利用やテレワーク環境においても、適切なアクセス制御とセキュリティを確保できるようになりました。さらに、従来は制約のあったテレワーク環境も改善され、現在では全職員が場所を問わず業務を行える環境が整っています。」と導入による変化を語った。
次のステージへ
今後も国民生活センターは、国の機関として求められる高い信頼性を維持しながら、LANシステムの安定運用を継続し、セキュリティ水準の維持や向上に取り組んでいく。
今回のLANシステム刷新はゼロトラストを軸に、セキュリティ・利便性・事業継続性を高いレベルで両立するデジタル基盤を構築した取り組みとなった。
国民生活センターは、一人ひとりの消費者が安全で安心な生活を送ることができるよう活動しており、LANシステムはその基盤として、今後のDX推進を支える土台となっている。
導入事例のダウンロードはこちらから
お客様プロフィール
独立行政法人国民生活センター様
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