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業務効率向上に向け、横浜銀行と東日本銀行が従業員向け生成AIを導入
「地域に根ざし、共に歩む存在として選ばれるソリューション・カンパニー」をグループビジョンに掲げるコンコルディア・フィナンシャルグループ。中核企業として力強くグループを牽引する横浜銀行と東日本銀行は、挑戦意欲・成長意欲の高い組織への変革を進めており、従業員の業務効率化と生産性向上に向けた取り組みの一つが、2023年11月27日に発表した「行内ChatGPT」の導入だ。本取り組みを主導した小西氏と佐藤氏に話を聞いた。
ソリューション・カンパニーとしての地方銀行
地方銀行屈指の規模を誇る横浜銀行と首都圏を中心に広域展開する東日本銀行は、2016年に経営統合し、コンコルディア・フィナンシャルグループの中核企業として事業活動を進めている。
金融DX(デジタルトランスフォーメーション)の注目度が高まる中、金融事業者はデジタル技術を駆使して金融サービスやビジネスモデルを変革し、業務をデジタル化することで高い競争優位性を確立する必要に迫られている。
同グループの経営統合は、お客様へのサービス向上と競争力強化に加え、費用・経費の効率化およびグループ内のシナジー効果を期待して行われた。同時に、多様な考え方や価値観を有する従業員それぞれの能力を最大限に活かす「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」を推進し、新たな価値を生み出すことで持続的な企業価値の向上を目指すとしている。
グループビジョンにある、ソリューション・カンパニーとは、金融事業にとどまらず、お客様と地域社会の課題に真摯に向き合い、もっとも身近な存在として問題解決に助力する姿勢を表したものだ。ソリューションによる支援には、データやITシステムを活用したものも含まれ、その取り組みを主導するのが、両行のICT推進部だ。
両行のICTに対する取り組みと課題
横浜銀行でICT基盤を担当するのが小西氏だ。ICT推進部は銀行内の全てのシステムを統括しており、複数のグループで構成されている。小西氏が所属する基盤グループは、OAやインフラ全般を運用・管理するITシステムを統括している。
東日本銀行のICT担当である佐藤氏が所属するICT推進部は、横浜銀行と同名称である。グループ体制が施行されてから、両行のICT推進部は執務室を共有し、多くのITプロジェクトやシステムの運用・運営に共同で取り組んでいる。それぞれの銀行で別々に取り組んでいては、お客様へのサービス向上や費用・経費の効率化の効果が発揮しにくいと判断し、3年前より現在の体制となった。
銀行業務は、稟議書の作成やマニュアルの作成など、文章作成業務を中心としたOA業務が多い。行員は、金融業務や事業支援などの業務スキルは申し分ないが、ICT活用のスキルは必ずしも高いとは言えない。
小西氏は「DXの推進は、銀行組織内の全員が、データとICTの活用により業務を変化させる意識が必要です。」と語る。そこで、営業店の行員が稟議書作成のスピードアップや、手間がかかる業務の軽減、OA環境のヘルプデスク利用も、ICT技術を駆使することでDXへの意識変化のきっかけとなると考え、「行内ChatGPT」の開発を検討した。
「行内ChatGPT」の構築をスタート
「行内ChatGPT」の構築にあたっては、ラックのAI開発チームの支援を受けた。ラックが社内に向けて提供している生成AIサービス「LACGAI」が、両行の利用イメージと合っていたためだ。
生成AIのプラットフォームは、マイクロソフト社のAzure OpenAIを選定した。選定理由としては、プライベートAI環境を実現するために必要な機能をすべて備え、AIモデルについても一定の評価を受けたものであることを重視した。ラックのAIエンジニアに実現イメージを共有したうえで、基盤の構築からアプリケーションの開発までを共同で推進した。
プロトタイプ開発を行う過程で明らかになったのは、インターネットで公開されている情報だけでは期待した結果を得られず、銀行内の業務文書を学習させ的確な回答に近づけるためのRAG(Retrieval-augmented Generation:検索拡張生成)が鍵ということだ。また、ユーザーインターフェースは、想定質問の選択で解決させるものではなく、入力されたプロンプト(質問を自然言語で受け入れる)を解釈し自然言語を返す生成AIの特長を色濃く打ち出した。
ユーザーテストをする過程で、生成AIが返信する内容にハルシネーション(事実に基づかない情報や、実際には存在しない情報を生成する現象)の発生が確認された。佐藤氏は、「与えられた情報を盲信せず結果を評価するといった、情報を扱う上でのリテラシー教育が必要だということがわかりました。」と振り返った。
最新技術の活用に伴うセキュリティへの懸念
「行内ChatGPT」の開発および運用を開始するにあたり、重視したのがセキュリティ上の課題だ。特に、クラウドを活用するシステムであることに関連する懸念があった。佐藤氏は、「Azure OpenAIが、行内の閉鎖された環境で稼働していること、運用内製化として行内でメンテナンスを含め対応していくことを丁寧に説明し、最終的に納得を得られました。」というように、関連各所の理解を促す重要性を語る。
また、横浜銀行と東日本銀行はコンコルディア・フィナンシャルグループに属する企業だが、「行内ChatGPT」はそれぞれの銀行の情報を基に生成AI環境を構築する計画のため、分離して運用されている。しかし、両行で共通で行う作業を整理し効率化することで、管理負荷を低減した。
「行内ChatGPT」の今後
「行内ChatGPT」の全社利用が開始されたが、活用が浸透したとはまだ言えない。個人の興味に任せていても利用者は増えないため、ICT推進室がリードして各営業店への勉強会を開催し、情報リテラシーとシステムの理解を高めつつ、利用者を増やす取り組みを行っている。世間的には話題になっているが、どのように便利になるかを納得しない限り受け入れられないため、根気よくメリットを伝えていくとのことだ。
今後は、「行内ChatGPT」を活用するアプリケーションの開発を、ローコードで行内内製化に取り組む予定だ。さらに、今回の開発経験を活かして、ファインチューニングが容易とされるAIモデルを試すなど、生成AIの活用に期待を寄せている。
小西氏は「将来的には、生成AIツールの連携を強化し、これによって日常業務を見直す抜本的な改革を行って、生産性や作業効率の向上につなげたいです。例えば、会議の内容から議事録を整理し、関連資料を生成するといった作業や、お客様に対する当行のソリューション紹介の際に、最適な提案を迅速に行えるような提案資料の生成など、これらの業務を自動化できるといいですね。」と展望を語った。
ソリューション・カンパニーとして地域の活性化に取り組む両行は、自らが最先端技術を取り入れることでICT活用のブレイクスルーを目指している。こうした取り組みが、金融機関の枠を超えたお客様の支援につながることを期待したい。
導入事例のダウンロードはこちらから
お客様プロフィール
コンコルディア・フィナンシャルグループ様
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