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テクニカルレポート | 

CYBER GRID JOURNAL Vol.18 "情報リテラシー維新~デジタル社会に必要なチカラを多角的に備えよ"

ラックの研究開発部門である「サイバー・グリッド・ジャパン」が発刊する、研究成果の最新報告書「CYBER GRID JOURNAL Vol.18」を、公開しました。

情報リテラシーは、インターネットやデジタル機器を適切に使う力と捉えられがちですが、デジタル社会が広がった今、その定義ははるかに複雑になっています。私たちは生活のあらゆる場面でデジタルに向き合い、恩恵を安全に享受するための判断力や態度が問われています。

サイバー・グリッド・ジャパンでは、情報リテラシーをいつもと違う角度から捉え、デジタル社会をより良く生きるヒントにつなげることを目的に、デジタル社会で生きるために備えるべき考え方や行動について、既成概念に捉われず、それぞれの研究分野から多角的に掘り下げることにしました。出発点としたのは、「脅威インテリジェンス」「国家としてのサイバーセキュリティ」「金融犯罪対策」「セキュリティガバナンス」「情報モラル」「セキュリティ対応力の可視化」です。この記事では、それぞれの視点の見どころをダイジェストでお届けします。

CYBER GRID JOURNAL Vol.18 表紙

巻頭特集:情報管理八策2025

2011年に公開した「情報管理八策」を再考します。天才と呼ばれる人物の創意工夫に触れ、文化は「思い」から始まり作法→道具→産業へ広がると再認識する中、サイバーセキュリティも同様に「ともる(共にまもる)」という「思い」を核とした文化形成の必要性を説きます。また、犯罪被害は急増し、攻撃は技術だけでなく人や制度へ拡大しています。サイバー空間が欠かせない存在となった今、全員が主体となって安全を維持する仕組みづくりが不可欠であり、次世代がその文化を築いていくことに期待を寄せます。

情報リテラシーとしての脅威インテリジェンス

「情報活用能力」としての情報リテラシーはもはや基礎的能力となっており、実社会で求められるのは組織のセキュリティを支える、より実践的なリテラシーです。組織人として求められるコンプライアンスを実現するためは、一人ひとりが責任を持つ必要があります。ここでは日常的に意識すべき情報リテラシーとして脅威インテリジェンスを取り上げ、実務のセキュリティ運用に活かせる方法を解説します。

企業と市民に求められるカウンター・インテリジェンスの視点

SNSやAIの普及で情報は武器となり、国家や企業の評判・政策に影響を与える時代となりました。国家間の競争は物理空間からサイバー、さらに認知領域へ拡大し、フェイクニュースや認知操作など非軍事的手段による影響力行使が常態化しています。国家を守るには受動的な情報保全では不十分であると言えます。ここでは、能動的サイバー防御とカウンター・インテリジェンスを統合的に捉える必要性、さらに企業の防諜体制強化とそれを支える情報リテラシーの重要性を論じます。

金融犯罪から身を守るために

金融犯罪やサイバー犯罪が急増し、特にオンライン化に伴う詐欺の巧妙化が深刻化しています。2025年には証券口座乗っ取りによる不正売買被害が6,900億円に達し、大きな社会問題となっています。犯罪者は偽メールやSMSで偽サイトへ誘導し、IDやパスワードを盗むフィッシング詐欺を多用します。ここでは、こうしたフィッシングの代表的手口とその対策について解説していきます。「だます技術」を知って金融犯罪から身を守りましょう。

デジタル社会に対応した"強固な組織づくり"

急速な環境変化の中、企業には全員参加のセキュリティ体制が求められています。サイバー脅威は高度化し、事業部門も含めた幅広い人材にセキュリティリテラシーが必要となりました。専門部署だけでは防御や復旧に限界があり、各部門が自らの業務リスクを理解し備える「プラス・セキュリティ」が不可欠です。ここでは、フォロワーシップとサイバーレジリエンスを組織文化として根付かせることで実現できる、強固なセキュリティ体制の重要性を説明します。

情報リテラシーを学ぶカードゲーム「リテらっこ」の目的とその効果

リテらっこは、楽しみながら情報リテラシーを学ぶカードゲームです。2024年12月のリリース以降、小学生から大人まで幅広く体験されており、人と会話しながら情報リテラシーを学ぶきっかけを提供し、インターネットやデジタル機器との適切な付き合い方を促します。体験者からは、考えを共有するワークショップとしての形式が高く評価されており、ここではリテらっこ開発の目的と効果を考察します。

情報リテラシーを学ぶカードゲーム「リテらっこ」

特別寄稿:サイバー攻撃に対応するためのリテラシー向上に向けた取り組み

株式会社KDDI総合研究所からの特別寄稿です。インターネット利用にはサポート詐欺やパスワードリスト型攻撃などの脅威が常に存在します。被害を防ぐには知識や事前対策が必要ですが、ICTに不慣れなユーザーは対策の手間や複雑さから行動に移しにくい状況です。KDDI総合研究所では、ユーザーの理解や負担を軽減する情報提供やツールの開発、セキュリティ行動変容ステージモデル(SeBeST)を用いた段階的支援により、安全確保の行動を促すユーザブルセキュリティの有効性を示しました。

CYBER GRID JOURNAL Vol.18 目次

  • 巻頭特集
    情報管理八策2025
    技術顧問 西本 逸郎
  • 情報リテラシーとしての脅威インテリジェンス
    次世代セキュリティ技術研究所 若居 和直
  • 企業と市民に求められるカウンター・インテリジェンスの視点
    ナショナルセキュリティ研究所 佐藤 雅俊
  • 金融犯罪から身を守るために
    金融犯罪対策センター 小森 美武
  • デジタル社会に対応した"強固な組織づくり"
    団体運営推進室 持田 啓司
  • 情報リテラシーを学ぶカードゲーム「リテらっこ」の目的とその効果
    ICT利用環境啓発支援室 高橋 怜子
  • 特別寄稿
    サイバー攻撃に対応するためのリテラシー向上に向けた取り組み
    株式会社KDDI総合研究所 澤谷 雪子
  • 巻末あとがき
CYBER GRID JOURNAL Vol.18

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