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SaaSの限界とAIの潮流
企業のIT戦略において、SaaS(Software as a Service)は長年にわたり信頼されてきたモデルです。企業向けアプリケーション分野で言えば、Salesforce社、Workday社、SAP社などが提供するERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客関係管理)、HR(人事)システムなどは、システムの迅速な立ち上げや運用負荷の軽減といった恩恵があり、多くの企業が活用してデジタル化を推進してきました。世界的に見ても、SaaSはインフラやスキルの企業規模や地域による差を吸収する手段として機能してきました。
しかし、近年の生成AIの登場と進化、特にOpenAI社がリリースしたChatGPTのインパクトによって、その前提が揺らいでいます。AI技術、特に大規模言語モデル(Large Language Models:LLM)は、もはや一部のテック企業の研究領域ではなく、日常的な業務改善や意思決定に活用できる実用的なツールへと進化しました。企業はこれまでのような「サービスに業務を合わせる」発想から、「業務に合わせてAIを設計する」という新たなパラダイムに移行しつつあるのです。
特筆すべきは、SAP社やServiceNow社といったSaaSの代表格でさえも、従来のUIやプロセス設計を見直し、生成AIを軸とした体験設計に踏み切っている点です。SAP社は「Joule」と呼ばれる生成AIアシスタントを2023年に発表し、ユーザーが自然言語で業務アクションを実行できるようにするなど、UIとAIを一体化させた革新を打ち出しています。SaaSという枠組みの中でも、AIが中核を担う体験設計が求められているのです。
なぜ今カスタムAIなのか
欧州の最新事情として注目されるのが、スウェーデンのフィンテック企業であるKlarna社の取り組みです。同社は、AIとSaaSの活用戦略における議論の中心におり、カスタムAIへのシフトを強く感じさせる事例として認識されています。
また、「Buy Now, Pay Later(後払い)」の決済モデルを牽引する存在としても知られ、H&M、IKEA、Spotifyなどの世界的に知名度の高い企業が同社のサービスを採用しています。9,300万人以上のアクティブユーザーを持ち、2024年の売上高は28億ドルを超えると見込まれるなど、国際的な影響力を持つ存在となっています。
そんなKlarna社が2023年、SalesforceやWorkdayといった業務系SaaSの利用停止を公言したことが大きな波紋を呼びました。多くの業界関係者やメディアはこれを「生成AIがSaaSに取って代わる象徴」として報じました。しかし、その後CEOのSiemiatkowski氏はLinkedInで「SaaSを放棄したのではなく、サイロ化されたデータを統合するためにテクノロジースタックを自社構築した結果、いくつかのSaaSが不要になっただけ」と説明しています。
Klarna社は社内のデータ基盤を再設計し、グラフデータベースのNeo4jを用いて知識構造をモデル化。RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)やオントロジー、ベクトル検索といった高度な技術を活用し、従業員が必要な情報に即座にアクセスできるAIインターフェースを整備しました。さらに、コード生成AIツールである「Cursor」を使って、エンジニアリング面でも生産性を大きく向上させたと言います。こうした変革の目的は、AIを使いやすくすることではなく、「Klarnaとは何か」を情報的に一元化し、企業としての意思決定や業務遂行を加速するためのものでした。
この動きは、単なるSaaSからの脱却ではなく、自社に最適化されたAIとデータ基盤の整備が、いかにビジネス成果に直結するかを示した好例と言えるでしょう。
SaaS対カスタムAIの比較
SaaSが提供する汎用的な機能とカスタムAIは、機能の多さや便利さを超えた本質的な違いがあります。まずユーザー体験(UX)の観点では、SaaSは万人向けに設計されているがゆえに、企業ごとのワークフローや組織文化との間に齟齬が生じやすいという課題があります。一方、カスタムAIは社内業務プロセスや職種に合わせてプロンプトやUIを最適化できるため、実運用への定着率や利用頻度が大きく向上します。
セキュリティやガバナンスの観点でも、カスタムAIは優位性を持っています。SaaSではユーザーデータがベンダーのクラウドに保存されることが多く、情報の所在や処理方法を完全に把握できないケースがあります。それに対してカスタムAIでは、データの保管先やアクセス権限、ログの取得などを自社のポリシーに沿って制御できます。マイクロソフト社が提供する「Microsoft Security Copilot」は、Microsoft 365の環境に統合する形でAIを活用したセキュリティ運用の支援を実現しています。その設計が、利便性とセキュリティの両立を前提としている点が評価されています。
ROI(投資対効果)の観点でも、初期コストやライセンス料の比較だけでは見えにくい違いがあります。SaaSは導入のスピード感に優れる反面、業務とのミスマッチが蓄積されると運用負荷や使われない機能が積み上がり、結果として見えにくいコストが増えていくリスクがあります。一方、カスタムAIは設計段階から自社の業務構造やニーズを前提に構築されるため、導入後の定着率が高く、情報検索や判断業務の効率化といった具体的な成果につながりやすい側面があります。
技術進展と市場の二極化
AIを活用した業務システムの構築において、技術面での進展もカスタムAIの可能性を大きく押し上げています。とりわけ注目されているのが、業界特化型の大規模言語モデル(LLM)の登場です。例えば金融領域では「BloombergGPT」、法律領域では「LawGPT」といったように、それぞれの専門データを学習させたモデルが登場しています。
さらに、こうしたモデルと自社データを連携させるためのオープンソースフレームワークとして、LangChainやLlamaIndexといったツールが広く普及し始めています。これらを活用することで、企業は特別な機械学習の専門知識がなくても、自社の知識データベースと汎用LLMを組み合わせた「社内専用AIアシスタント」を構築できるようになってきました。
こうした背景で、AI市場は「ベースモデルの進化を牽引する少数のテック大手」と、「独自データやUI設計で差別化する多数の企業」という構造に二極化しつつあります。つまり、AIの時代における企業競争力は、汎用の技術そのものではなく、いかに自社の文脈に最適化された体験と知識活用を実現できるかにかかっているのです。
今後の展望と日本市場の見込み
世界的には、SaaSベンダーによるAIの組み込みが一層加速していくでしょう。従来の機能中心のSaaSから、AIを組み込んだユーザー中心のサービス体験へと進化し、結果として「SaaS as AI」とも呼べる時代が訪れるかもしれません。また、各業界に特化したLLMを活用したソリューションの登場も続き、ニーズの細分化に対応する動きが進むでしょう。
一方、日本市場においては、これまで外資系SaaSベンダーに依存してきた企業が、ガバナンスやデータ主権、ユーザー体験の独自性といった観点から、徐々にカスタムAI構築の必要性に目を向け始めています。特に大手企業や自治体では、Microsoft 365やGoogle Workspaceと連携したAI導入の取り組みが進んでおり、セキュリティや内部統制の文脈でもAIが有効であるという認識が広がりつつあります。
こうした流れの中で、日本のSIベンダーやセキュリティ企業は、データ整備からAIアプリケーションの構築、運用支援までを一体で支援する役割が期待されています。今後のカスタムAI導入は、「どのAIを選ぶか」ではなく、「どう使いこなすか」、さらには「どう自社の文脈に溶け込ませるか」という戦略的な問いに変化していきそうです。そのとき、日本企業に求められるのは、技術的な対応だけではなく、経営・業務・ITの三位一体で取り組むAI駆動型の変革力だと言えそうです。
プロフィール

末岡 洋子(ITジャーナリスト)
アットマーク・アイティ(現アイティメディア)のニュース記者を務めた後、独立。フリーランスになってからは、ITを中心に教育など分野を拡大してITの影響や動向を追っている。
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