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こんにちは、新規事業開発部の高橋です。
デジタルの力を活用しながら地域の課題解決を図る「地域商社事業」の取り組みを、地域の自治体や事業者、住民の皆さんとともに進めています。
セキュリティの会社が、なぜ地域課題に取り組むのかと疑問に思う方もいるかもしれません。ラックは1995年からいち早く情報セキュリティ事業に取り組んできましたが、その根底にはずっと「社会にとって真に必要な価値を提供したい」という信念がありました。地域商社事業もこの信念を引継ぎ、国内各地で進む人口減少や、人材をはじめとする地域の貴重な資源の流出などの解決策を提供することで、地域・社会全体の持続可能な発展に貢献したいと考えています。
今回は、山口県山陽小野田市と取り組んだ、地域住民の交流施設の参加状況や介護予防に関する評価など、参加者に関わる情報をデジタル化して一元管理する仕組み作りについて紹介します。
なぜこのプロジェクトに取り組んだのか
プロジェクトは、「住民運営通いの場※」の情報をデジタル化し、通いの場の参加者や市役所などの関係者がデータを共有・活用できる仕組みを開発するというものです。これまでは、出欠や体力測定等の情報を全て紙で管理していたため集約に手間がかかり、蓄積されていくデータの活用もできていませんでした。
※ 地域の住民同士が気軽に集い、一緒に活動内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる場所(地域がいきいき 集まろう!通いの場 厚生労働省)
このプロジェクトに携わったきっかけは、自治体の課題とスタートアップ・民間企業をマッチングするオープンイノベーション・プラットフォーム「Urban Innovation JAPAN」で、山陽小野田市の公募案件に採択されたことからスタートしました。応募した理由は、ソフトウェアを中心としたソリューションの開発(創出)と、継続的な運用を通じて地域課題を解決する私たちの取り組みが、今回の「紙の情報をデジタルで一元管理したい」という課題と親和性が高いと感じたからです。
また、地域商社事業の使命は「真に必要な価値の提供」です。地域において、一見目立たなくて見落とされがちであるけれど、本質的な課題(潜在的な課題)にこそ取り組む価値があると考えています。住民が自主的に集い、健康づくりに関する活動を行う「住民運営通いの場」は、地域の介護予防の拠点にもなっています。各地で高齢化が進む中、医療や介護といった緊急を要する分野だけではなく、高齢者の社会参加や健康寿命延伸に資する活動は、地域社会の活力の根源を底上げし、地域活性に繋がるはずだと考えました。
こだわった2つのポイント
取り組みを進めるにあたり、こだわったポイントは主に2つあります。
1つ目は、「要求定義」を徹底的に行ったことです。今回は実証可能な期間が半年と設定されていたため、限られた期間内で明確な成果を出す必要がありました。そこで、全期間の6分の1にあたる最初の1ヶ月間で、自治体や地域の実情を踏まえた「やりたいこと」の洗い出しと、優先順位をつける作業を行いました。
2つ目は、機能や価値を細かくリリースすることです。短期間で成果を出すため、開発と実証のフェーズを細分化しました。
具体的には、はじめにアプリケーションの画面デザインのイメージ画像(モックアップ)をもとに、現地で住民の方から意見をもらいます。得られたフィードバックから、実際にタブレット等で動作する限定機能のアプリケーション(プロトタイプ)を開発し、さらに意見を収集してサービスに反映していくというように、段階的なリリースを繰り返しました。これにより、関係者それぞれの「やりたいこと」への柔軟な対応を目指しました。
SaaSサービスやノーコードツールの活用
アプリケーションの開発にあたっては、Webブラウザ上で機能を利用できるSaaS(Software as a Service)や、プログラミング不要でWebアプリケーションを開発できるノーコードツールを採用しました。
一般的な開発プロセスでは、企画、デザイン、開発など、スキルごとに人員が必要となりますが、その分、工数が増加してしまいます。しかし、SaaSサービスやノーコードツールであれば、企画者(非技術者)でも直感的にアプリケーションを開発できるため、複数の役割を1人で担えて、コスト削減に繋がります。
また、これらのツールは必要な機能の追加や変更を比較的容易に行えるので、自治体や住民の皆さんの要望を容易に反映でき、スピード感がありつつも柔軟な開発ができました。今回のような、予算と時間に制約がある試行的な地域課題に取り組む際には非常に有用なツールでした。
ただ、簡便なツールである一方、カスタマイズの自由度に限界があり、デザインの仕様変更などに工夫を要するところもありました。それでも、最終的には実証として価値の確認ができるレベルまでデザインや機能を作成できたので、半年間の取り組みを通してツール活用の幅も広げられました。
プロジェクトを通して得た学び
今回の実証を通して得た学びの1つは、対面でのコミュニケーションの重要性です。
自治体担当者と複数回実施した打ち合わせのうち、会議室全体を投影したオンラインミーティングでは個人の反応を捉えにくく、このまま進めて良いか迷う場面がありました。対面の場合は、表情など言語以外の情報もありスムーズに進められると感じたため、半年の実証期間の間で何度も山陽小野田市に訪問しました。
さらに、何度も現地を訪れて住民の皆さんとコミュニケーションをとるうちに、信頼関係ができ会話もスムーズになり、結果として様々な意見を引き出せたように感じています。もちろん良い意見ばかりではなく、機能として不要であるという点なども早々に把握でき、その後の改修に速やかに生かせました。
オンラインのコミュニケーションは場所を選ばずに実施できる良さがありつつも、信頼関係を構築するには対面に勝るコミュニケーションはありません。それぞれをバランスよく活用していく重要性を実感できました。
また、Urban Innovation JAPANというプラットフォームを通じて、本社から離れた地域の自治体との協働をどのように効果的・効率的に推進できるかという可能性を探れたことも大きな学びでした。ラックがUrban Innovation JAPAN経由での公募案件にエントリーしたのは2回目ですが、初めての自治体と課題解決に取り組むのは簡単ではありません。そのため、客観的な立ち位置から自治体と民間企業の双方にアドバイスし、半年間伴走してくれるUrban Innovation JAPANという存在はとても心強かったです。
さいごに
半年間の実証は終了しましたが、今後も山陽小野田市との取り組みを継続したいと考えています。実証プロジェクトで設定した目標は達成したものの、「真に必要な価値」の提供に向けて改善すべき点はまだまだ多くあると認識しています。そのため、各機能のブラッシュアップに向けて継続的に動いていきます。サービスの完成後は、同様の課題を抱える他の自治体とも価値の共有をしたいと考えています。
今後も「地域のよきパートナー」として、その場に根差し地域の人々に寄り添った課題を解決し、新たな価値の提供に貢献すべく、私たちにできることを積み重ねてまいります。
プロフィール
高橋 亮
SEやWebディレクターを経て起業して事業売却後、メーカー子会社で経営管理を担当。2016年にラック入社後は社内ビジネスコンテストを創設し、新規事業開発部で活動。現在は地域商社事業を担当し、ノーコードツールでWebアプリを開発中。趣味は献血。
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