プロジェクトストーリー Project Story

プロジェクトストーリー02 セキュリティソリューション企業のイメージが強いLACだが、幅広い業界に向けてシステム開発を行うSI(システムインテグレーション)事業にも定評がある。ここでは、その中のひとつ、大手携帯キャリア系列の人気ファッションEC事業会社をクライアントとしたプロジェクトストーリーを紹介する。現在、常時10数名のプロジェクトチームでECサイトのシステム開発や保守を担うほか、クライアント独自のECプラットフォームを他社アパレルメーカーに提供する事業もサポート。多くのサイトのユーザーが快適にショッピングを楽しめる環境の構築に貢献している。

PM(プロジェクトマネージャー) 1996年入社 アプリケーションスペシャリスト 2007年入社 ITスペシャリスト 1998年入社 ITスペシャリスト 2010年入社

確実な成果で信頼を勝ち取り、クライアント企業の新規事業もサポート
複数のファッションECサイトの売上アップに貢献

レディス、メンズのドメスティックからインポートブランドまで、幅広いファッション商材を扱う人気ECサイトが、システムの大規模なリニューアルを計画したのは2010年。そのITインフラやフレームワーク、フロントサイト(ユーザーの目に触れる画面)を背後で支える管理システムなどの刷新を依頼されたLACは、ピーク時で20名ほどからなるプロジェクトチームを組み、さまざまな困難があったものの、1年半かけてリニューアルを完遂した。

「ショッピングをされるユーザーの評価も高かったことから信頼を得た当社は、引き続き新規事業のサポートを依頼されました。新規事業というのは、そのクライアント企業がECサイトを持たないアパレルメーカーに、自社のノウハウを提供してサイト構築を支援するというものです」
そう語るのは、サイトリニューアル時からLACの各チームの指揮を執っているPM(プロジェクトマネージャー)の尾崎(仮名)だ。
当初開発は他社IT企業に委託していたが、開発や運用の品質がクライアント企業の求めるレベルに達しないため、LACにシステムの改修が依頼された。そのミッションを成功させれば、以後クライアント企業が受注するECサイト構築の関連業務を任されるようになる可能性が高かったことから、尾崎はチームメンバーを率いてこのプロジェクトに全力で取り組んだ。

「根本的に問題だったのは、ECサイトのサービス要件や機能要件が曖昧なまま開発が進められていたことです。まずはクライアント企業と徹底的に話し合い、サイトで提供されるサービスに必要なシステム上の機能を明確化。それを受けてチームメンバーがシステムを解析し、問題を1つ1つ解決していくことになりました」

尾崎の仕事はチームを統括することだけではない。ECサイトの構築や運用はクライアント企業側の担当者との共同作業になるが、システム開発のプロセスを熟知していない担当者も少なくなく、例えばリリース直前の最終試験にあたる受入テストがいかに重要で、事前にどのような準備をしなければならないかなど、時間をかけて粘り強く説明することで、理解と協力体制を得ることが必要だった。
「PMにはそうした対外折衝をうまく行う能力が求められます。お客様には口うるさく接したので煙たがられたこともあると思いますが(笑)、きちんと要件定義をし、さまざまなプロセスを標準化した結果、お客様の望むことがしっかりとシステムに反映されるようになり、やがて信頼関係で結ばれるようになりました」

こうして改修されたECサイトは、ユーザー数を着実に伸ばすようになった。LACはその後も数社の新たなサイト構築を担い、クライアント企業のECソリューション事業は軌道に乗っている。
「クライアント企業のECサイト、またECソリューション事業の各サイトの売上の報告を受けるとき、『自分たちの仕事がそれに貢献しているんだ』というリアルな実感が得られます。SI事業は、それぞれの専門スキルを持つメンバーが力を結集して行うもの。個々のメンバーの位置づけが全体のどこにあるのかを常に意識してもらうとともに、チーム内、あるいはお客様とのコミュニケーションを促進することが、PMにとって一番大切な役割だと思っています」
尾崎はそうした自覚のもと、プロジェクトチームの隅々に目を配りながら、今日も多くのメンバーを束ねている。

システムの基盤とフレームワークを再構築し
クライアントの“販売機会損失”を防ぐことに成功

ソフトウェアの開発会社勤務を経て入社した西山(仮名)は、システムの基盤やフレームワークの構築に豊富な経験と知識を持つ。仲間たちの間では、「困ったら西山に聞け」と言われるほど信頼の厚いメンバーだ。現在はクライアント企業のファッションECサイトや、ソリューション事業の一貫として構築されるECサイトに幅広くかかわり、システム開発全般を技術面でリーディングしている。

2011年、PMの尾崎とともにクライアント企業のECサイトの改修に参画した西山は、システムに潜む多くの問題点を指摘した。
「サイトに新機能を追加すると不具合が頻発するとの相談を受けて確認したところ、多くのソリューションで構成されていたためにトラフィックが把握しづらい、アプリケーションがアップデートされると予期せぬ問題が発生するなど、深刻な課題がいくつも見つかりました。元日に行われる大規模なセールは開始後10分で1000万円以上もの売上が見込まれるのですが、システムの処理能力が低いために機能停止することがあると聞き、販売の機会損失を防ぐためにスケールアウト(処理能力の向上)が必須だと思いました」
西山がまず手をつけたのは、複雑なアーキテクチャ(構成)の解消である。各デバイスのアプリケーションを1つのサーバに集約できるようフレームワークを開発し、システムの機能性を高めるためにミドルウェア(OSとアプリケーションの中間的な存在)を置くことを提案。それと同時に、運用担当者を必要とせずにアプリケーションがアップデートされる仕組みも構築した。また、既存のシステムは容易にサーバを増やせない構成だったので、それを改善してユーザーのアクセス急増にも対応できる環境を整えた。

チームの総力を挙げてシステムを刷新し、いよいよ旧システムからのリプレースが実行されたのは、着手してから1年半後。西山たちは新システムへのデータ移行をスムーズにするための独自のプログラムも開発し、万全の態勢でその時を迎えた。システムの切り替え時には、一時的にサイトを停止することになる。前回のリニューアル時には1週間にも及んだという停止期間を、西山たちはわずか8時間に短縮することができた。
「新システムは問題なく稼働。でもその時点では安心などできませんでした。まだ出発点に到達したに過ぎず、システムが長期間安定運用されなければ、リプレースが成功したとはいえないからです。その後1ヵ月ほどは常にサーバにログインしてモニタリングし、他の業務をしながら新システムの挙動を見守っていました」と西山は回想する。
現在では日付が元旦に切り替わった瞬間の、5倍に迫るアクセス数の跳ね上がりも問題なく処理している。

「お客様の困り事を技術力で解決するのが私たちの任務。よいソリューションを提供するだけではなく、その結果としてお客様の業績がアップすることに大きな喜びを感じます」
そう胸を張る西山は、万一トラブルが発生したら即応できるよう、今も元日セール時のモニタリングを欠かさない。多数のユーザーがスムーズにショッピングをしているのを見届けることは、西山にとって大切な年越し行事となっている。

セキュリティエンジニアとして積み上げた知識を活かし
ユーザーが安全に使えるサイトの構築と運営をリード

ファッションECサイトの大規模なリニューアルに向け、LACのプロジェクトチームが結成されるのに先立ち、安田(仮名)はクライアント企業のシステム部に出向していた。リニューアルの大部分を担うのはLACだが、細部のシステム改修には複数の他社IT企業も参加する。クライアント企業のシステム部には、それらIT企業とさまざまな擦り合わせをする調整役がいなければならないし、開発されたシステムをチェックして評価する必要もある。
「クライアント企業のエンジニア体制強化に伴い、お客様から『EC事業会社のエンジニアとして一緒にやってみないか』と声をかけていただき、リニューアル完了までという期間限定で、クライアント企業の社員として私がお客様の元に出向くことになりました」と安田は経緯を説明する。

安田はLACに入社後6年にわたってセキュリティエンジニアとしてキャリアを積んだ。顧客のサイトやサーバのセキュリティ診断をするうち、その対象となるシステムを作る側への興味が湧き、志願してシステム開発を行う部署に異動。セキュリティにもシステム開発にも精通する希少な人材だといえる。
このリニューアル案件も終盤に差しかかったころ、安田がセキュリティのエキスパートであることを知ったクライアント企業は、各システムのWebセキュリティ診断の調整役を務めて欲しいと依頼してきた。
「リニューアルしたシステムのリリース前には、セキュリティ面に穴がないかどうかをテストしなければなりません。自社の作ったシステムを自社で診断するのでは客観性が得られないので、診断は他社のセキュリティ会社に任せることになります。診断を受けるためにはテストデータを整えるなどたくさんの準備がいりますし、予算の範囲でより有意義な診断が受けられるよう、その会社と話し合ったりすることも必要です。私はクライアント企業のシステム部の社員という立場で、その調整役を任されることになりました」
リリース直前の診断でセキュリティ上の重大な欠点が指摘されれば、リニューアルしたシステムの納期が遅れることになりかねない。
「ましてセキュリティ面に脆弱性があるとなれば、LACの信用問題にかかわるのでハラハラしましたが、幸い大きな問題が発見されることはありませんでした。西山さんたちの構築した基盤やフレームワークがしっかりしていたおかげです」と安田は振り返る。

診断の調整を問題なくやってのけた安田を高く評価したクライアント企業はその後、自社のエンジニアに体系的なセキュリティ知識を身につけさせるため、勉強会の講師役となることを要請。安田が自ら資料を作成し、業務時間外に10回以上開いた勉強会には、多数の社員が参加した。
「今はクライアント企業のECサイトの保守業務を担い、ユーザーがより使いやすいサイトにするためのシステム改善などを行っていますが、セキュリティに関するさまざまな相談を寄せられることも少なくありません」
セキュリティの最新情報を日々収集している安田は、サイトのセキュリティ強化につながりそうな情報を積極的に提供している。現在の安田にとっては正規の業務範囲外の活動だが、自分の専門知識が顧客のために役立つのは無上の喜びだ。
「セキュリティの相談ができるパートナーがいるのは心強い」というクライアントの言葉が、安田の大きな励みとなっている。

システムの総合テストのリーダーを経験することで
“大きな成長を遂げた自分”を実感

2010年に入社した辻(仮名)は、実務に就きながらシステム開発者として必要なスキルを身につけてきた。大学で専攻したのは社会心理学。入社時は、ITに関して小・中学校の「情報科」で学んだ程度の知識しかなかった。
ファッションECサイトのプロジェクトメンバーとなったのは2011年。技術を磨き、最近はクライアント企業のスタッフが利用するバックエンドシステムの設計や整備などを担当するようになった。辻にとってファッションECサイトはユーザーとしても身近なものであるだけに、この業務には大きなやりがいが感じられるという。

2015年の秋、そんな辻に突如大きなミッションが与えられた。
「商品データの登録業務を省力化するためECサイトとブランドメーカーが在庫連携することになり、そのための機能をシステムに追加する作業が進められていました。リニューアル直前には、新機能を加えたシステムが支障なく稼働するかどうか確認するのですが、その総合テストを取りまとめるリーダーに指名されたんです」 そうしたテストは通常はクライアント企業のシステム部のスタッフが主導するが、その担当者が複数の別の案件への対応に追われていたことから、辻に白羽の矢が立った。追加される機能のシステム構築には他社のIT企業もかかわっており、テストリーダーは10人ほどの関係者を取りまとめてスケジュールを管理しなければならない。他社が担当するシステムには、テストに耐えられないような障害を抱えている部分も見られ、期限までにその改善を促すのもリーダーの任務だった。
「私にはリーダーを務めた経験がなく、関係者の全員がかなり年上だったことから強い態度で催促をすることもできず、準備が捗らないまま時間だけが進むという事態に陥ってしまいました」

焦燥感に包まれた辻は、過去の資料をあたって総合テストの準備のプロセスを改めて学び、クライアント企業やLACの社員をつかまえては疑問点を解決した。また、テストにかかわる全員に情報共有を徹底させることが重要だと感じ、全体の進捗状況を逐次報告しながら、なりふり構わずしつこいくらいに協力を要請。時間短縮のために省いても支障がないと判断したテスト項目の削減も提案するなどした結果、予定どおりに総合テストをクリアし、新機能を追加したシステムを無事に稼働させることができた。
「この仕事にはITスキルだけではなく、多くの人に協力してもらえるコミュニケーション力や説得力も必要なんだということを痛感させられました」

辻が窮地にあったことを知りつつ、「あえて静観していた」とPMの尾崎は明かす。
「入社後5年目で、業務知識も十分に身についた彼女は、そろそろ責任ある立場を担うべき時期だと考えていたからです。いよいよという事態になったら助け舟を出すつもりでしたが、彼女自身が奮起して難局を乗り切ってくれました」
辻は今、新たな案件の総合テストのリーダーを務めるための準備を進めているところだ。決済に関わる重要なバックエンドシステムなのでその責任はより重いが、前回よりもうまくやり通す自信がある。

SIとはソリューションの提供でクライアントに貢献することだが、辻は日々の業務を進めながら、常にその先にあるユーザーの姿を思い浮かべている。ユーザーが快適にショッピングを楽しめるサイト環境を構築し、保守することこそが、この仕事の最終的な目標であるべき。――そうした意識は辻に限らず、このプロジェクトに携わるLACの全メンバーに共通するものだ。