プロジェクトストーリー Project Story

プロジェクトストーリー01 メガバンク インターネットバンキング スマホ対応 編 インターネットバンキングを、スマートフォンでも利用できるようにしたい。――メガバンクからの依頼を受けたLACはプロジェクトチームを結成し、そのための画面を開発。日本の金融機関として初となる、スマホによるネットバンキングサービスの提供に貢献した。チームメンバーが試行錯誤して作成した操作性の高い画面は高い評価を受け、現在も多くのユーザーに利用されている。

PM(プロジェクトマネージャー)2007年入社 x ITスペシャリスト 2008年入社

邦銀初のスマホ向けネットバンキングサービスの提供に向け
ユーザビリティを徹底的に考えた画面を開発

2010年4月。LACのITサービス本部金融システム第一統括部に、新しい案件がもたらされた。そのミッションは、メガバンクのインターネットバンキングサービスをモバイルでも利用できるようにすることである。当時のスマホ利用率は携帯電話全体のわずか10%足らず。
今ではごく一般的なスマホによるネットバンキングが行える金融機関は存在せず、邦銀で初となる画期的な取り組みだった。

メンバーの1人としてプロジェクトに参画した奥村(仮名)は、それまで証券会社のシステム構築に携わっていた。
「スマホなんてまだ手にしたことがなかった私は、『自分にできるのかな』という不安に包まれると同時に、『先端的な仕事ができるぞ』とも思いました。驚いたのは、スマホ対応ブラウザへの適合だけではなく、画面のデザインまで私たちに任されたことです」
どうすればユーザーが見やすく、操作しやすい画面になるか、奥村はプロジェクトメンバーとなったもう1人の先輩社員と意見を出し合った。クライアントから出された要望は、「スマホらしい画面づくりをして欲しい」というもの。そのメガバンクは当初、NTTドコモの携帯電話向け「iアプリバンキング」のデザインをそのままスマホに移植することを計画していたが、そうではない新しいデザインが求められたのだ。
「徹底的に検討したのは、スマホ画面とPC画面の違いです。屋外でも使われるスマホは、明るいところでもはっきり見える色彩やコントラストでなければならない。画面が小さいので、不要なものはそぎ落として情報量をコンパクトにしなければならない。そして何より重要なのは、タッチ操作がしやすいインターフェースを生み出すことでした。そのようなものづくりをするのは初めての経験で、納期までに完成させなければならないプレッシャーを感じながらも、夢中になりました」
どこをタッチするとどうなるのか、奥村たちはユーザーが直感的に理解できる、操作性の高い画面づくりを試行錯誤。その結果、2010年11月に日本初のスマホ向けネットバンキングサービスが開始された。

「サービス開始は日曜日の午前8時でした。前夜からリリース作業に立ち会った私は、8時になると自分のスマホからアクセスし、無事に稼働していることを確認。クライアントからユーザビリティを評価され、『パーフェクトリリース』と言っていただいたことも嬉しかったですが、このサービスを利用した人が『○○銀行、やるじゃん!』とツイートしているのを見たときは、一般ユーザーが便利だと感じてくれていることが実感できて、もっと喜びが大きかったですね」
しかしミッションはそれで完了したわけではない。スマホのOSがバージョンアップされると画面の見た目や挙動に不具合が発生することがあり、そのたびに対応を迫られることになった。当初はiOS向けのサービスだったが、その後Android OSも普及し、iOSでは問題なく表示されても、Android OSでは不具合が生じてしまうこともある。
「どのOSでも同じ挙動になるようにするにはJavaScriptやスタイルシートを設定する必要があり、文系出身の私はそうしたことを改めて勉強しなければなりませんでした」

リリース時は残高照会や振込といった基本的な機能のみだったが、ユーザーの増加とともに積立預金や定期預金などスマホで操作できるメニューが次々に追加されていき、奥村はそのチームリーダーとしてメンバーを統率するようになった。
現在このメガバンクにはスマホ対応チーム以外に、ネットバンキングの案件推進チーム・投資信託の案件推進チームなども置かれ、15名ほどのLAC社員が開発や保守業務に携わっている。2015年秋にPM(プロジェクトマネージャー)に抜擢された奥村は、その全体を管理する立場にある。
「クライアントからのさまざまなリクエストを各チームに伝えたり、ともに開発業務にあたる他社IT企業との調整をし、チームワークが乱れてきたなと感じたらお菓子を配ったり、飲み会を企画したりと(笑)、納期までによりよい開発をするためにチーム全体に目配りをして雰囲気をよくするのが私の役割です」
PMとしてはまだ新人だが、責任が重い分だけやりがいも大きい職務に、奥村は新たな喜びを見つけたところだ。草創期から参加した思い入れの深いスマホ対応業務については、現在は進捗管理というかたちでかかわっており、リリースから数年を経た今も、自ら手がけた画面のデザインが刷新されることなく使われているのが、奥村の大きな誇りとなっている。

チームが一丸となって追求するのは
ユーザーにとってよりよいサービス

「私もあんな仕事をしてみたいな」
同じ部署の先輩であり、一緒に女子会を開いたりする間柄だった奥村がインターネットバンキングのスマホ対応業務に携わるようになったのを見て、片山(仮名)は密かな憧れを抱いた。入社してからずっと携わってきたのは、省庁やメガバンクのITインフラに関わる諸業務である。
「もちろん基盤系の仕事にはやりがいを感じていましたが、奥村さんの話を聞いて、一般ユーザーに利用してもらえる案件の開発も楽しいんだろうなって思ったんです」
片山は異動を願い出た。社員の要望にできるだけ応えようとする土壌が会社にはあり、上司に相談することに躊躇はなかったという。
「奥村さんのいるチームへの配属が決まったのは、2014年の3月。希望が叶い、新入社員のときのようなフレッシュな気持ちで、新しい業務に臨むことになりました」

最初に手がけたのは、セキュリティ機能を強化するための案件だった。アカウント情報を盗み取られた口座からの不正送金などを防ぐため、ネットバンキングでは送金前にパスワードを発行して本人確認をすることがある。その仕組みをスマホに採り入れるため、奥村とともに画面の作成をした。
「意気込んで取り組んだものの、初めての分野の仕事だったので、システムの細部がよくわからず、一から勉強する必要がありました。会社に蓄積されている資料を参照したり、過去に同じような案件に携わった社員に尋ねたり、わからないことを1つずつ解決しながら前に進んでいくという感じでした」
片山の大学での専攻は法学だ。新人研修で基礎的なIT知識を身につけたものの、ITインフラの仕事に就いた当初は、わからないことだらけだった。自ら学び、周囲の社員に助言してもらいながら、実務をとおしてスキルを蓄えてきた。努力さえすれば文系出身でも十分に力を発揮できるようになることを身をもって知っていたし、身近な先輩である奥村もまた大学と大学院で教育学を専攻した文系の出身だった。
「この仕事に求められるのは論理力です。その意味では、法律学科で身につけた物事を筋道立って思考する力は、十分に役立っていると思います。また、個人的な興味から学生時代に色彩検定を取得しましたが、その知識はスマホ画面を作るという現在の仕事にダイレクトに活かされています。どんな知識やスキルも、どこかで活用するチャンスがあるものです」
無事に画面が完成し、パスワードの送信によるセキュリティ機能がスマホに応用されてしっかり稼働しているのを確認したとき、片山はそれまでに味わったことのない喜びに包まれた。自分の開発した画面が広くユーザーの目に触れているという実感がもたらす喜びである。

現在は6名のメンバーとともに、同社が予定している各種新規機能の開発を進めている。PC向けとしては用意されているが、スマホ向けとしてはまだ提供されていないネットバンキングのサービスメニューは多い。ユーザーのニーズを反映し、今後もスマホ向けの機能は少しずつ追加されていくことになる。
「一番嬉しいのは、『PC画面と同じように使いやすい』という評判を耳にするときです」
そう語る片山は、日ごろから他行のサイトをつぶさに観察しての研究も怠らない。
画面開発の案件と案件の合間には、スマホのOSのバージョンアップに伴って発生する不具合のメンテナンスなどの保守業務にあたっている。ユーザーのスマホにエラーが表示され、ヘルプデスクに問い合わせが入ったりしたときの対応をするのも、片山の重要な任務の1つだ。
PMとなり、メガバンクに置かれたLACの複数のプロジェクトチームの統括をするようになった奥村は、「スマホ対応チームの現場はほとんど彼女に任せ切り」と、片山の仕事ぶりを高く評価する。

「IT系の仕事には、個々の社員が黙々と自分の仕事を進めるというイメージがありましたが、実際にはチーム作業です。仲間たちとともに、1つのものを作り上げていく。その結果、クライアントやユーザーに喜ばれる仕事なんだということを、最近痛感するようになりました」
チームワークを大切に思う一方で、片山はよりよいサービスを提供するためにさらにさまざまな分野の知識と技術を修得し、自分自身を高める必要があるという。ITの世界には、学ぶべきことが無数にある。だからこそこの仕事は奥が深くて面白くいのだと、片山は感じている。